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サブプライム爆発とは何であったか  文科系

2009年02月27日 22時42分40秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
現在の住宅バブル、サブプライム債権組み込み証券の爆発は、単に偶発的問題ではなくって、構造的・必然的なものだったと考える。問題の焦点が、大家たちの経済理論史の争点とぴったり合致するからである。以下は、いろいろ勉強しながらこのブログに書いてきたもののいわば自分用の総まとめメモみたいなものなのだが、ご笑覧を。

カール・マルクスは資本主義の最大欠陥をこう指摘している。
資本主義はその仕組み上、一方に富が集中して、他方にその裏返しで相対的な貧乏人が増えるので、やがては何を作っても売れなくなっていく。富が集中した人々がどこへお金を投資しても儲からなくなっていく。どんな新商品の開発に努めても、貿易で売り回っても、どれだけ宣伝をしても。一方で富の集積の割に、他方で世界の一般消費者が相対的に貧乏になっていくから、有効需要はなくなるということなのだ。そこから景気の悪化と信用不安など急な悪循環に陥る時があって、恐慌は起こるべくして起こるものだと、マルクスは述べた。そういう恐慌が、倒産、失業、戦争というものを引き起こすことなども含めて、資本主義社会の社会の諸悪の最大根元であるとも見たのであった。

マルクスが述べたこの問題の解決策は、上記の富の不均等発展、だぶつきを防ぐべく、資本というものをなんらか国家が管理していくというものだったと思う。しかし、これを目指した現実の社会主義諸国家は、その官僚制、非民主性ゆえに崩壊した。1990年ごろの事である。インターネットを検閲する中国などを見ても、この疑念は全く去らない。中国と同様の民主集中制を取る日本共産党も含めて、好ましい社会主義像が存在しないのは確かだと思う。

他方、資本主義の中で有効需要を作り出そうとする問題意識をもった流れもあった。ケインズがそれであって、彼の理論は、イギリス国家を通じて、あるいは国際組織の中で、戦前戦後とも世界を動かした。国家による適度のインフレ政策や公共投資で有効需要を作り出し、完全雇用を計ろうとしたのであった。この流れは20世紀の4分の3ぐらいまで世界に影響を与えてきたと思う。

ところが、いわゆるサッチャリズム、レーガノミックスが、このケインズ理論を「大きな国家」として退け、「小さな国家と新自由主義経済」を唱え始めた。1980年頃からのことである。
ちょうどそんな時、1990年前後に「社会主義体制」が崩壊した。ここから資本主義社会は「小さな国家と新自由主義経済」に邁進していくことになった。
さて、今回の恐慌は、この「小さな国家と新自由主義経済」への邁進の帰結だったのではないか。以下にその次第を述べてみたい。

マルクスとケインズを退けた「小さな国家と新自由主義経済」派は、心おきなく新自由主義経済をいわば世界に野放しにした。金融資本がますます、世界の金をかき集めていくことになった。「株主資本主義」、「時価会計主義」などにより徹底的に合理化が進められて、中産階級も没落し、一般消費者はますます相対的に貧乏になっていった。この流れは、アメリカがこれを世界に押しつけたことによって、世界的に広げられていった。これは、有効需要をますます世界的に消し去っていく仕組みともなった。そこで生み出された新需要、新商品こそが、途方もない軍事国家アメリカであり、サブプライム住宅であり、様々な金融商品だったのではなかったか。
これらは、砂上の楼閣の『有効需要』、幻想的な有効需要と言って良いと思う。やがて、低所得者に無理に買わせた住宅は、その値上がりが止まったとたんに差し押さえにあい、それにともなって金融商品は暴落し、新自由主義経済の花形・投資会社は国家の助けがなければつぶれるしかないという運命に陥った。こういう新自由主義グローバリズムの全てが幻想であったと示されたわけである。今や世界には有り余る資本に相当する有効需要などどこにも存在しない。中国にも、インドにも。

「小さな国家」だったはずのものが今や、金融会社どころか一般会社にまで金を出して助けるために、通貨の大増発に努めることとなった。めちゃくちゃ大きな大きな国家に大転換しているということだろう。これはいったい、なんという皮肉であろうか。こうして、近頃ではこんな手前勝手な議論さえ聞こえるようになった。こんなのが経済理論とは、本当にちゃんちゃらおかしい。
「平時は国家は民間資本に干渉するな。従来の国家業務もなるべく民間に譲れ。民間が困ったときだけは、出てきて助けるべきだ。金融会社にだけではなく、一般企業にも金を出すべきである。でないと世界がむちゃくちゃになるぞ」
これでは、大泥棒のいわば開きなおりではないか。この議論の後者についてアメリカ共和党が「社会主義ではないか」と論難し、全体としては「モラルハザードである」と批判するのも至極もっともな話である。

その間中、失業者や社会的弱者はますます国家から顧みられなくなっていった。小さな国家も今現在の「超大きな国家」も、富者のために存在してきたというのは確かなようである。サブプライムやその証券化の張本人たちが、個人としては破綻から上手く逃げ延びているというのもまた、確かだろう。
一部の経済学者たちも含めて、国家に巣くうなんという大泥棒たちであることか。住宅バブル、サブプライムバブルの破裂は、彼ら以外の全ての経済学者たちが予言していたことなのだから。資本主義の理論って、今やこんな情けないものになってしまった? 詐欺師は言葉を操るから、彼らを詐欺師と名付けても良いかも知れない。ブッシュや小泉を支えた経済学者は、もう当然掃いて捨てさるべきだろう。
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6 コメント

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けやきさんへ (文科系)
2009-03-02 00:02:50
けやきさんへ

語応答ありがとうございます。
オバマの今後の動き、僕も大変興味があります。ブッシュや共和党の非合理なやり方とは少しは違うのではないかとも。出来上がった産軍複合体向け国家予算を急には変えられないかも知れませんが、何かは変わるのではと。でなければ、アメリカは間もなく過去のイギリスのように落日のはずですから。

他方、見えてもいない将来社会像を無意識に持っていて、それによって現在を批判しても全く無意味ですものね。そういう人々にはただこう言うだけです。
「戦後60年余、自民永久政権に基本的に一矢も報いることが出来なかった『理論』で、今更偉そうに何を言うか。誰でも良い、とにかく自民政権をつぶしてくれ」
Unknown (けやき)
2009-03-01 22:38:34
ケインズ的政策では先進国での経済成長を続けられなくなったところから、サッチャーらの新自由主義が生まれ、企業活動(とくにに大企業)を厚遇、保護するようになったのだと理解します。
「小さな国家」はスローガンですが、本当に現実がそうだったのかよくわかりません。
赤字国債、国際貢献の名による莫大な海外資金流出・・。分かる方がいたら是非お教え下さい。


この間サラ金生活を余儀なくされながら、借金で着飾っていたと米経済をたとえることができるでしょう。
借金の根は何だろう。

バブルの発生と崩壊(サブプライム爆発)の中に、戦後米国の軍産経済体制の失敗を見たいと私は思います。
今回の米国バブルの一因にイラク、アフガン戦争があるのではないかとも思います。戦争は破壊を目的とし、それ自体は価値を生まない(地雷1個数百円、その人的物的損失はそれ以上です。地雷除去に1万円かかると聞いたこともあります。差し引きのマイナスは明らかでしょう)。米国はたくさんの戦費を使いました。そういうことをやっていて経済全体が興隆するはずがないのだと思います。疲弊しないはずがないのだと思います。

米国では、軍産一体体制、両者不可分な経済構造を作り上げて、海外進出、世界支配をとげてゆくのですが、企業のグローバル化(海外進出)は国内産業の空洞化をまねき、軍事は富の消耗ですから、それ以上の大きな国内経済の発展がない限り、米国財政は赤字化傾向になる必然があります。共和党レーガンやブッシュの新自由主義政策は大企業保護政策、海外進出奨励政策ですから、一層この傾向を強め、矛盾を加速しました。民主党カーターやクリントンは国内経済を重視しようとしますが、軍産体制、米大企業の海外進出を押し止めるには至りません。。政権支持基盤の問題があるのでしょう、歴代大統領は例外なく戦争を起こさざるを得ないようです。


かつて身勝手な資本主義が必然的に世界規模の戦争を引き起こしたのだと世界史で習いました(「帝国主義時代」)。
私たちは軍事力に頼る経済体制、侵略的経済発展への反省の歴史を習った。いまの米国を見てもう一度反省をしてもよいだろうと思います。
もし前向きな資本主義の発展を図ろうとするなら、憲法九条が不可欠になるはずです。

オバマが軍事費を削るのかどうか、軍需産業を縮小し得るのか、大いに関心があります。
軍事に金を浪費している限り、その分米経済の回復は遅れ、ブッシュ時代と同様の矛盾に落ち込まざるをえないのではないかと思います。
日本だって同じだと思います。

ヒットラーは (文科系)
2009-03-01 11:11:25
落石さん

ヒットラーが、あれだけ短期間に政権につき、世界を引き回したのには、今と同じような情勢があったと言われていますね。
ちょっと調べてみました。

30歳までのヒットラーって、全くの無名どころか、いわば人生の脱落者。実業学校を中退し、美術学校の入試に落ちただけでなく、ウィーン、ミュンヘンで若年年金をもらってボヘミアンやってた。
彼がのし上がり、上り詰めていったのはほぼ40代の10年間。まさに情勢とかみあったということなのでしょうね。
恐慌の中から、軍隊と軍事産業で、失業者を「救い?」、景気を良くしました。国民は熱狂的に彼を支持し、選挙の倍々ゲームなどは、こんなふう。
1930年(彼は41歳)、国会選挙で8倍に。
1932年、さらに倍増。
1933年、首相に就任。この年7月、対立政党を解散させる。
1934年、大統領とドイツ国防軍最高司令官となって国内全権力掌握。

ここからあとは、外交政策上の成功につながっていきます。なんと急激なのし上がり方でしょうか。

国民が困窮にあえいでいる時って、確かに怖いです。また、当時のドイツ大衆は愚かだったと思っても間違いない。それを言っちゃーおしまいよ、ですけど。
社会主義と全体主義 (落石)
2009-03-01 09:29:03
この2つが世界恐慌の後始末の
仕方として力を得て、
ふたつとも失敗。
そして残った資本主義も
またしても失敗。

経済学者は頭をまるめれば良いけど、
普通の人はどうしたら良いの?

いつも、初めての体験 (文科系)
2009-02-28 19:12:50
落石さん

歴史関係の事項はいつも初めての体験ゾーンですよ。
と言っても、この間の新自由主義野放しはいったい何だったんでしょうね。こうなると分かっていてこうなってしまった、サブプライムとその証券化。
社会主義国家が倒れたから出来たことなのは間違いありません。社会主義国家出現以前は、「人間の『機会平等』が正しい」という考え方すらなかったんですからね。

まー経済学が頭を丸めて出直すことでしょうね。
その通り (落石)
2009-02-28 10:21:42
よいまとめですね。

さて、これからどうなっていくのでしょうね?

さしあたりケインズ路線が主流になって
国家の有効需要創出が行われてはじめて
いますが、これで解決するのでしょうか?

ニューディールも戦争までは
効果を現さなかったという話もあります。

そうすると初めての体験ゾーンに
入っていくわけですが・・・



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