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随筆紹介  万葉からだ歌(11) 「胸」豊かに美しく   文科系

2015年12月23日 16時20分50秒 | 文芸作品
随筆 「胸」豊かに美しく  N・Rさんの作品

 さ雄鹿の胸別けにかも秋萩の
 散り過ぎになる盛りに去ぬる
── 若々しく大きな鹿が豊かな広い胸で萩の花をしなやかに分けて行く ──

「胸を張る」「胸が騒ぐ」「胸が痛む」など、万葉集は「胸のうち」と「心のうち」を一つのものにして、大切にしてきた。だから胸賛美の歌が多い。

 胸別の広き我妹腰細のすがる
 娘女のきらぎらしきに花のごと
── 今でいう大きな美しい胸と、蜂のように腰が細くくびれた娘女よ、それに私はあこがれてきた。

 後年、井原西鶴は『世間胸算用』の文中で「物思うは心のうち」と胸文化を語っている。現代の健康法の一つ、ラジオ体操の歌中でも「朝だ希望の青い空、胸をひらいて空あおぐ」やはり胸を反らして大きく張ろうとすすめる。
 万葉集の「たらちね」表現も、母、女の胸、乳は足りたる愛と美しきもののきわめつけにしてきた。
 ── 子どもが乳を求めて夜泣きしている。私も、あなたの足が遠のいたので夜泣きしております ──と詠む女たち。さらに、こんな歌までも。
 みどり子のためこそ乳母は求むもの
 乳飲めや君が乳母求むらむ
── お乳はみどり子のもの、それを乳飲まぬあなたが、なぜほしがるの ──と男を軽く叱っている面白い一首も。この歌には”ハハノチチワチチのチチナリヤ”というおおらかな歌意まで付いている。

 私ごとだが、軍隊教育をされていたころ「起立、胸を張って直立不動」と、絶えず号令をかけられ、胸むかつく思いをしていたことだ。

コメント
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