九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

随筆紹介 「借金」  文科系

2014年04月24日 07時55分00秒 | 文芸作品
 僕が属している同人誌の仲間の随筆を紹介していますが、今回はS.Nさんの作品です。

『 昨年のことだ。梅雨入りが近いころだったか、高校時代の友に、久しぶりにメールをしてみた。その時の私は、義母の介護をやりに、渋々、夫の里に行き始めたころだった。姑の暴言に心が疲れていた。相手は認知症だから、とわかってはいるが、それに耐えるほど精神的に強くない。誰かに言いたい、わかってもらいたいと思っていた。
 私をよく知っている彼女に向けてキーを叩き、愚痴を並べた。「いろいろあるんだね。苦労しているんだね」すぐに返事がきた。短い文だが、私に寄り添ってくれる気がして、少し楽になった。彼女は二十代のころ、同居していた姑との仲が原因で、結婚一年足らずで離婚した心の傷を抱えている。だから私の気持ちもわかってくれるのだろう。しかし、その返事には続きがあった。彼女の近況を綴った文面に見入った。
「借金地獄に突入しました」、と始まる文。何があったの。自営業の男性と再婚した彼女は、二人の息子を育てながら幸せだったはずだ。東名高速道路をとばして、一家で愛知万博にも来てくれた。大柄で人のよさそうな連れ合いは、長身の彼女に似合っていた。なのに、どうしたというのだ。文は続く。
 不況の影響で仕事がうまくいかなくなった。銀行からの多額の借り入れに、どうやって返済したらいいか。生活が派手な夫は自分が遊ぶ金まで借金し、危機感がないという。「寝ていても、お金のことばかり考えて」夫に、もう借りないで、と言っても聞き入れてくれない。生活費もストップ状態なのに、六十万円、という毎月の返済をどうしたらいいのか。一人で悩んでいる様子が浮かぶ。鬱にならなければいいが。
 彼女とは、高校時代はクラスも部活も同じだった。お互い、勉強や片思いの恋など、あの時も悩みや不安はあった。だけど今思えば、それらはたいしたことではなく、少なくとも生活の苦労など感じていなかった。ともに若さを楽しんでいた素晴らしい時期だった。だけど、今の彼女にあの時の明るさはないだろう。そして、姑にいじられている私の愚痴なんて、ちっぽけな事だと思うだろう。
 私が大富豪なら、なにげなく振った服のポケットから落ちてきた札束を渡せるのに。と夢のようなことを思ってみた。だけど、現実には何もできない、助けられない。いや、もし余裕があったとしても、貸さないほうがいいだろう。借りたことで、彼女が負い目を感じてはいけない。貸し借りの関係でいるより、今まで通り対等の関係でいたい。
「人生は楽しいことばかりじゃないよね。心も体も疲れているだろうけど、自分を大切にして」これぐらいの返事しかできない。陰で心配しているよ、心に余裕ができたらメールして。そういう意味を含めた。それ以上の言葉はいらない。過度の励ましや慰めは、かえって彼女を傷つけるかもしれない。本当の苦しみは、直面している者にしかわからないだろうから。
 彼女がこんな状況から解放される日が、早くくることを祈るだけだ。』
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「集団的自衛権・解釈改憲」への見事な反論例  文科系

2014年04月24日 07時51分40秒 | 国内政治・経済・社会問題
 本日遅く起きて中日新聞を読んでいたら、標記のことで非常によい記事があった。いろんな識者が日替わりで出て来て論じている「われらの憲法」という連載コーナーである。今日の論者は、元内閣法制局長官・阪田雅裕氏(70)とあった。早速、いつも新聞をよく読んでいる連れ合いに、「今日の、集団的自衛権への反論記事、読んだ?」、「読んだ、読んだ。とてもしっかりした記事ね。分かりやすくて丁寧だし!」とのやりとり。文字通りそういう記事だから、全国に向けて全文そのまま発信したい。

『集団的自衛権の行使を認めていない現在の憲法解釈は、内閣法制局が勝手に考えたわけではありません。吉田茂内閣以来、歴代の首相が一貫して言い続けてきたことです。
 それがいかに妥当な解釈なのか。私は内閣法制局の長官を務めていたころ、官房長官だった安倍(晋三)さんに直接説明しました。解釈改憲に意欲的な今の姿を見ていると、十分にご理解いただけなかったと考えるしかありません。
 自衛隊はなぜ「自衛隊」なのか。読んで字の通り、実力行使が認められるのは自らの国に武力攻撃があった場合に限られます。外国に出かけていって戦争に加わるようになれば、他国の軍隊と変わりません。政権が本気でそれを目指すのであれば、「日本は平和主義をやめる」と国民にはっきり言うべきです。
 行使を認めようとする人たちは「(同盟国が)殴られているのに助けないのか」と言いますが、殴られているんじゃなくて、他の国が勝手に殴り合いをしているわけです。仲裁することはあってもどちらか一方に味方する行為を、日本の国民は望むでしょうか。
 「解釈改憲}や「限定容認論」という言葉から、100%の平和主義を90%に緩めるだけで「九条はちゃんと残る」と思っている人も多い。でも、違います。解釈を変えたらすべてを失うことになる。オール・オア・ナッシングだと理解してほしい。
 改憲に必要な国民投票で過半数の賛成を得る自信がないからといって、九条の解釈を一方の理論で変えてしまうのは政治の王道ではない。政治的に数が多ければ解釈すら自在に変えられるという考え方は、立憲主義の否定です。
 解釈を変えるなら、合理的に説明できるものでなければならない。安倍さんがしようとしていることは、その矩(のり)を超えています。』
コメント (5)
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