世界に衝撃を与えた「ゴッホ他殺説」
ゴッホは1890年7月27日、ピストル自殺を図ります。
理由ははっきりせず、その翌日にテオ(ゴッホの弟)が駆け付けて、
息のあるうちに二人は会うことができました。
そして、7月29日の未明にゴッホは息を引き取り、翌日の30日に葬式が
営まれました。
なぜ自殺してしまったのでしょうか。
ゴッホの死を巡っては諸説あります。
数年前にアメリカで「ファン・ゴッホの生涯」という評伝が出版され
、新説の「ゴッホ他殺説」が衝撃を与えました。
この筆者(スティーヴン・ネイフ、グレゴリー・ホワイト・スミス)
は、*ピューリッツア賞を受賞しています。
*(ピューリッツア賞=アメリカ 新聞、雑誌、オンライン上の報道、文学、作曲の
功績に対して授与される賞。)
◆ゴッホの死の謎を全編油絵風のアニメーションで描き、解き明かしていく
異色のサスペンスドラマ。
俳優の演じた実写映像をもとに約6万5000枚に及ぶ油絵が描かれ、
アニメーション化するという手法で作られた。
ブログにもこれからゴッホの描いた絵が次々に登場しますが
その中の「絵」も数多く、アニメーション化されて、映画のシーン
になっています。
肖像画も「動き」、「会話」をするという・・・
こんな具合です~
ゴッホです。
ガシュ医師が 郵便配達のローランと会話
また 映画 「アット・エターニティーズ・ゲイト」
「永遠の門 ゴッホの見た未来」
現代美術家ジュリアン・シュナーベルが「他殺説」を採用しています。
主演は ウイレム・デフォー
この映画でベネチアの男優賞受賞
*他殺説というのはこうです。
日頃からゴッホをいじめていた子どもたちが、カラスを脅かす
為の空砲を持ち出し、半分ジョークでゴッホに突きつけてきました。
ゴッホも空砲だと思ったから「やれるものならやってみろ」と
言い返したら,弾が入っていて、思いがけず撃たれたしまった…
という説です。
原田マハさんは、個人的には、他殺説はないと思ってますと。
ゴッホ財団も他殺説を認めていません。
もちろん本当のところなど誰にもわからないし、仮説を立てる
ことで新しい解釈が広がることがあるのかもしれません。
当時の言葉を、今回は、仮説を立て…「リボルバー」として彼女は
「ゴッホ他殺説?」に挑んだ。 さて、物語は?
アムステルダム中央駅に冴が降り立った。
レンガ通りの街並身を車窓に移しながら~ 目の前に広々と
ひらけた芝生の広場があり、オランダが誇る三大美術館が見渡せる。
冴は、パリ大学の学生時代から足繫くこの美術館に通った。
ファン・ゴッホ美術館
そういえば、現在サザビーズで活躍している小坂莉子とアムステルダム
を訪れた思い出がふいに蘇った。
冴を案内役にふたりはファン・ゴッホ美術館をじっくり見て回った。
二人は心ゆくまで 時間にも、仕事にも、ノルマにも、
何も追いかけられず、素顔のままで絵に向き合っていた。
まもなく閉館になるというタイミングで、二人は揃って一枚の絵の
前に足を止めた。
それは、ゴッホの作品ではなく、ポールゴーギャンが描いた
ゴッホの肖像画ーーー
<ひまわりを描くフィンセント・ファン・ゴッホ>だった。
1888年、ゴッホはアルルで一人暮らしをしていたが、パリにいる
画家仲間に向けて共同生活をしながら制作をしないかと呼びかけた。
それにただひとり応えたのがゴーギャンだった。
この絵は、二人が決定的に仲違いする直前に描かれたもので、作品は
弟のテオのもとに納められた。
アルルでの経済的支援と引き換えに、ゴーギャンはテオに自作を送って
いたのだ。この時期、テオは兄ばかりでなく、ゴーギャンまでも
経済的に支えていた。
冴は、この絵を見ていて~
心細げな、自信のなさそうな目。堂々としているが、心の奥に
猜疑心を培っているように見えるのは、このあと、ふたりに
悲しい別離が待っているのを私たちが知っているからだろうか。
そんなふうに思っていたら、それまで黙って絵に向き合っていた
莉子が、突然、言った。
ゴーギャンは、怖かったのかもね。
不意を突かれて、冴は思わず訊き返した。
ーーー怖かった? 何が?
だから、ゴッホのことが。なんかこのままだと食われちゃうというか
…ゴーギャンは、生きいきしてるゴッホを描いて、それをテオに送って
安心させてやろうって気持ちもあったかもしれないけど、同時に、
君の兄さんはとんでもないやつだよって、
絵を通して言いたかったのかも。
どきりとした。
莉子が何気なく口にした感想は的を得ていた。
まさに、冴は修士論文で、絵を通して交錯したゴッホとゴーギャンの
複雑な心理を読み解こうとしていたのだが、
莉子はたやすく核心に触れてきた~ こんなにもあっさりと。
その後、二人は、美術館職員用のカフェで、
美術館のキュレーター アデル・ホイダ・エイケン女史と
「ゴッホ展」に出品されたリボルバーについて直接お話を伺うことに。
挨拶を済ませ、早速に話を切り出す~
冴のオークションハウスに持ち込まれたことを告げると~
「まさか、ほんとうに?」
それから、 矢次ばやに質問が…
「いつオークションは開催?」「予想落札価格は?」
「ちょっと待ってください」と冴は彼女を制し、
「まだ、何も決まっていません。出品依頼を引き受けてもいないので」
「なぜ?」
「それは、あのリボルバーが、
本当にファン・ゴッホの自殺に関係しているものなのかどうか、
確証がないからです」
「そう、その通りです。何も確証がない。
・・・・誰が、持ち込んだのですか?」
「それはお答えできません。守秘義務があるので」
「では、その人物は何と言ってそれをあなたに見せたのですか?
『このリボルバーはファン・ゴッホを撃ち抜いたものです』 とでも?」
「ええ、そうです。・・・・なぜわかるのですか?」
「私も、同じことを言われて、あのリボルバーを見せられたからよ」
一瞬、ふたりは口を結んで見つめ合った。
預かり品(リボルバー)を撮影した(真横、正面、背面、斜め左、右、上、下
様々角度から撮影されている。)画像を見てもらう。
画面をみつけて、「この画像の、ここ正面、もう少し大きく。
もう少し 」
ややあって、ようやく彼女が顔を上げて、ひと言、言った。
「これはーー違う。 当館の展覧会に出品されたものじゃないわ 」
冴は、彼女の言葉の意味が よくわからなかった。
違う? ・・違うって、どういうこと?
じゃあ、この錆びついたリボルバーは・・・いったい 何なのだ?