アカデミー賞外国語映画賞を受賞した、「おくりびと」が、大変なロングランを続けている。
おそらく、興行収入は60億を越えるだろうと言われている。
その日本映画の秀作ともいえる「おくりびと」が、何とワースト映画の第1位に選ばれてしまったのだ。
この作品の特別なファンではないが、映画ファンならずとも、これには驚いたり、がっかりした人も多いのではないか。
選んだのは、戦前から続いている、硬派の専門誌「映画芸術」最新版だ。
この雑誌、日本映画の毎年ベスト10とワースト10を選出している。
全員で、31人の評論家、脚本家らが、08年の日本映画84作品を採点したのだ。
それによると、ワースト部門の1位は「おくりびと」、2位「少林少女」、3、4位が「ザ・マジックアワー」「私は貝になりたい」、5位が「トウキョウソナタ」となっている。
では、ベスト部門の方はどうか。
こちらの方は、1位は「ノン子36歳(家事手伝い)」、2位「実録・連合赤軍」、3、4位は「接吻」「トウキョウソナタ」、5位が「人のセックスを笑うな」となっている。
「トウキョウソナタ」などは、選者によって両極端の評価が下されているわけだ。
それにしても、人気抜群の「おくりびと」が最低の評価とは・・・。
ワースト部門で、辛い評価を下したある選者(編集者)は、
「人の死を扱う職業に正面から向き合っていない。親子の話に逃げている。
石の交換のエピソードも、父親がどんな気持ちで石を持っていたか、説明不足で、全体的にご都合主義の作品だ」
として、なかなか手厳しい。
まあ、批判は自由なので、人それぞれの意見をあまり気にしないことだろう。
「映画芸術」の編集部には、この記事が掲載されてから、連日のように、「こんな雑誌は廃刊にしろ」とか「ひどすぎるぞ」と言った批判が寄せられていて、アカデミー賞受賞後さらに激しさを増したそうだ。
それもそうだろう。
普通の映画ファンなら、怒るに違いない。
そのあまりの抗議、批判にも毅然(?)と主張を譲らないところに、敵も多いことだろう。
「映画芸術」という雑誌も、なかなか気が荒い。
「おくりびと」は、言われるようなそんな愚作ではないと思うし、大衆が広く支持する作品を攻撃する(?)姿勢を、一般の人々はどう思うだろうか。
造反有理といっても、人間が作る映画に、どんな優秀作といえども、完璧な作品などありえない。
ワーストであれ、ベストであれ、一位の‘勲章’に変りはないか。
いやあ、変わりがないわけはあるまい。
ちょっぴり、罪作りな話である。