徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「プラスティック・シティ」―闇の世界の血の絆―

2009-03-16 21:45:00 | 映画

南米・ブラジルを舞台にした、闇の世界の激しいドラマだ。
原始のジャングルと、進化し構造化しすぎた街が混在する国、ブラジル・・・。

ブラジルの多民族都市を舞台に、闇の世界に生きる男たちの、「血の繋がりよりも深い絆」を描いている。
寓話的な色彩の強い作品である。
中国・香港・ブラジル・日本合作のユー・リクウァイ監督作品だ。

様々な民族や価値観が混在する街を描くあまり、実に突飛で、サイケデリックな演出や映像が散りばめられている。
もう、それは呆れるほどの驚きで、これはときに鮮やかな‘喧騒’の彩りを観ているようだ。
そんな感じで見終わったとき、この種の映画に慣れていないことで、いささか疲労を禁じえなかった。

サンパウロのベルダーデ地区・・・。
そこは、世界でも最も大きな日本人街といわれる。
今では、アジア系をはじめとする、多民族が暮らす東洋街だ。

全身にタトゥーを入れたキリン(オダギリ・ジョー)は、ブラジルで育った日系ブラジル人だ。
アマゾンのジャングルで両親を殺された彼は、アジア系ブラジル人のユダ(アンソニー・ウォンに拾われ、息子として育てられる。
青年に成長したキリンは、ユダが経営するショッピングモールで、コピー商品を販売するなど、闇稼業に手を染めている。
裏社会のボスとして、大勢の取り巻きを従えるユダは、東洋街でダンスクラブを営む美女オチョ(ホァン・イー)と暮らし、地区一帯を牛耳っていた。
しかし、新たに東洋街に進出してきた、実業家のミスター台湾(チェン・チャオロン)ら、ユダの失脚を狙う勢力が、徐々に台頭してきていた。

ある日、商店街は警察の手入れを受ける。
コピー商品マーケットの黒幕であったユダは、身柄を拘束される。
監獄に閉じ込められたユダは、しばしば命を狙われ、彼の身を案じたキリンは、どんな手段を駆使してでもユダを釈放しようと奔走する。

キリンと政治家コエーリョ(アントーニオ・ペトリン)の裏取引で、ユダはようやく出所する。
ミスター台湾は、すでにショッピングモールの筆頭株主になっていた。
さらに、ユダが所有していた巨大な船と商品まで、すべてが没収されるという事態にまで発展し、抗争は一段と激しさを増していくことになる。
激しい抗争が勃発し、ユダに向けて銃弾が放たれたことをきっかけに、キリンはその凄まじいまでの過酷な運命に巻き込まれていくのだった。

アクションシーンも鮮烈だ。
自然の静と、人間の動が対照的だ。
・・・アマゾンの神秘な森で話が始まり、そして終わる。
アジア人の新しい悪党たちの話が、魅力あるものとは思えないが、彼らの弱さ、彼らを取り巻く不合理な社会の仕組みなどから、ユー・リクウァイ監督は、“生き残る人々”の話を思う存分描いてみたかったようだ。

それは、ギャングの快楽主義と精神的な現実感ということか。
一番重要に考えられたのは、父と息子の関係性なのかも・・・。
血の繋がりのない親と子の絆を、最後まで見届けてみたかったという、ユー・リクウァイ監督の本音はその辺りにあるのかも知れない。

映画「プラスティック・シティは、ブラジルが舞台だが、東洋の剣術、恋愛を含む様々な要素を混淆させ、その大いなる原始と現代の混沌の中に、血の繋がりをヴィジョンに再構築を試みた剛毅な作品だ。
ヴェネチア国際映画祭コンペテイション部門正式出品作で、ユー・リクウァイ監督が切り取るブラジルの姿は、厳しい現実の一面をのぞかせつつ、あくまでも寓話的だ。