徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「地上5センチの恋心」―ファンタジックなラブ・コメディ―

2008-12-14 12:00:00 | 映画
平凡な人生を送っている、普通の主婦がいた。
すべてを手に入れているのに、幸せを感じられない人気作家がいた。
この二人を結びつけたのは、一通のファンレターだった。

エリック=エマニュエル・シュミット監督のフランス映画だ。
ありきたりの日常をバラ色に変えて、ミーハー心をときめかせる、夢みる幸せドラマだ。
はじめて公開されたのは、大分前のようだ。

ささやかな生活を送っているオデット(カトリーヌ・フロ)にとって、何よりの幸せと言えば、お気に入りのロマンス作家バルタザール(アルベール・デュポンデル)の本を読むことであった。
たとえ空想上であっても、それが彼女の恋する気持ちなのだった。
彼こそが、心の恋人だから・・・。
そんな憧れの人物が、現実に自分の前に現れたらどうなるか。

オデットは、バルタザールのサイン会に、とびきりのおしゃれをして会場に向かった。
そこで、彼女は、彼にファンレターを渡した・・・。

この頃、作家のバルタザールは、どこか満たされない生活を送っていて、妻とも不仲の関係にあった。
人気作家は自殺まで図ったが、一命をとりとめた。
そんな中に届いた、オデットからの一通のファンレターが二人を引き合わせる。
オデットからのレターを読んだ彼は、突然彼女のところを訪れる・・・。

でも、数年前に夫を失い、二人の子供の母親でもあるオデットにとって、バルタザールは恋愛の対象ではなく、あくまでも‘憧れ’の対象であってほしかった。
自分の痛める心を癒してくれるのは、オデットだと思い込むバルタザールは、彼女に恋を告白するが、それを知った彼女は逆に彼と距離を置くようになるのだった。
バルタザールは、彼女の家に押しかけ、共に生活するようになって、気持ちの上では強く惹かれあう二人だった。
しかし、オデットの心は、バルタザールへの‘憧れ’の域を出ることはなかったのだ。
オデットから、「あなたは、‘運命の人’ではない」と言われて、バルタザールは彼女のもとを去っていく。
オデットとバルタザールの奇妙な生活は、このまま終わってしまうかと見えたのだったが・・・。

これは、ファンタジックな大人のラブ・コメディだ。
小説の世界にひたって、幸せを感じ、作者が現れ、もっと幸せとハッピーな気分が高揚する。
そのことが、作品の中では、地上5センチをふわふわと浮遊するという形で、キュートな表現となる。
勿論、二人の間にはハッピーだけでは割り切れない、複雑な心理も生まれたりする。
オデットは、やっぱり何歳になっても、夢みる‘大人の少女’なのだ。
ヒロインは、何かあれば、すぐにジョセフィン・ベーカーの歌を口ずさみながら、踊りだし、いつでも地上から少し浮いているような女性なのだ。

フランス映画の、洒落た小粋な会話とセンスが行きとどいた(?)、明るく楽しめる作品にはなっている。
いつになっても、ミーハーな夢みる女の子でいたい。
女性の心には、そうした想いが枯れずにあって、いつまでも若くありたいと願っている。
よいことは楽しみ、悪いことは軽く受け流して、やさしく、温かく、しかし真直ぐに現実を見つめていく。
幸せは自分でつかむもの、自分が幸せなら、他人が何と言おうと気にしない。

このフランス映画「地上5センチの恋心は、大それたテーマを掲げているわけではなく、何となく、子供だましのような、他愛のない作品で、イイ元気がもらえそうな、まあ少し浮き浮きした話も悪い気はしないかも・・・。