この本に夢中になっていたのは確か自分が１８歳の時であった。以後再読することはなかった。
生きよ堕ちよ、と堕落こそが人間を人間たらしめ、しかも人間を救う便利な近道であると・・・
＜人間だから墜ちるのであり、生きているから墜ちるだけだ。だが人間は永遠に墜ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、墜ちぬくためには弱すぎる。＞
そのようなことを急に思い出すことができた午後のプール。
９月１日の今日からスポーツジムに通うこととなった。館内の器具やプールの使い方など教えてもらう約束の時間に３０分遅れてしまった。遅刻は珍しいことではない。だからインストラクターさんの指導時間がずれ込むことになった。これじゃご迷惑をかけることになるではないか、よって今日はイイですよ、適当にプール内歩行だけして帰りますよ・・と。
そして横眼で利用者さんを眺めた。午後の時間水泳スクールの幼稚園児が２０人ほど、それ以外は･･･ﾅﾝﾄ・・・ジイやババばっかり。腹の突き出たオッサンにこれまたブクブクと栄養の行き渡ったご婦人ばっかり。プールの中はトドがウジャウジャと湧き、その隣の２５メートル水泳コースではカバが水中に潜ったり浮いたりしながらゆっくり前方に進んでいるような景色。その様子を痺れ足のよちよち歩き化したペンギンのようにしてプールサイドから独りぽつんと見ておった。そして思ったワケよ。ワシも落ちるとこまで落ちてしもうたヵ・・・。
家から３０秒で海にドボンと飛び込むことの出来る環境で自分は小中学校を過ごしたぜ、泳ぐってのは健康云々ではなく、楽しみに食べるためにタコ捕ったりガザミを捕まえたりトコブシを岩陰で探したりシッタカ貝をいずれも潜って捕ることが“泳ぐ”＝遊ぶ意味であったのに、そしてボラを潜って追っかけモリで突いたりするようなことが自分にとって水に浸かることであり泳ぐ意味であった・・・が、な～んもそのようなことではなく、単に水の中をウロウロするだけの、これでは、芸を身に付けたアシカよりも落ちるではないか・・・プールの中はタコはいないではないか・・などとひどく自尊心が傷ついてしもうたワケ。
こんなことまでして健康管理をし、長生きを狙う人とじっくり議論してみたいと思とる。ぐゎ～と息して、ぽこんと逝くことを望む自分として、話をしてみたいと思とる。が、初日にして話し相手はいない。
午前は協力雇用支援事業者機構、保護観察官のお二人を誘い介護事業所を開拓訪問することに。