カクレマショウ

やっぴBLOG

「ポセイドン・アドベンチャー」のほう(「ポセイドン」じゃなくて)

2006-07-08 | ■映画

映画「オーメン」はリメイクでしたが、「ポセイドン」もリメイク版です。オリジナルは「ポセイドン・アドベンチャー」。1972年の映画です。中学生の頃テレビで見てひどく感動したものでした。そのあとも、テレビやレンタルビデオで何度も見ていますが、いまだにあの映画を越える「パニック映画」を私は知らない。

1400名の乗客を乗せてニューヨークからギリシャに向かう豪華客船「ポセイドン号」。大晦日の夜、新年を迎えるパーティが盛大に開かれる中、突然巨大な津波がポセイドン号を襲う。バラスト(底荷)を積載していないため安定の悪い状態となっていた船は大波に飲まれて一気に転覆してしまう。パーティ会場は文字通り天地をひっくり返したようなパニックに陥る。ごろごろと床を転がり、「天井に」落下して死んでいく乗客たち。生き残った乗客の中に米国人牧師のスコットがいた。船底のうち、鉄板が最も薄いスクリュー部分から脱出する可能性があると考えたスコットは、乗組員や船マニアの子どもの情報を元に、「船尾」を目指して脱出しようと呼びかける。数名の乗客が彼に従う。しかし彼らの行く手には大きな苦難が待ち構えていた…。

手に汗握る脱出劇は、スコット牧師(ジーン・ハックマン)と刑事のマイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)の争いをメインに進んでいきます。スコット牧師の方がたぶん「正義」で、マイクは悪役じゃないけど、何かにつけスコットのリーダーシップにいちゃもんをつけては「正義」を際だたせる役回りです。ボーグナインのアクの強い顔が役どころにぴったりはまっています。

スコット×マイク。そのほかにも、この映画はいろいろな「二人ペア」が出てきます。マイクと元娼婦リンダの夫妻。善良で独身の雑貨屋のおじさん(演じているのは「史上最大の作戦」で教会の尖塔にひっかかってしまう空挺隊員役のレッド・バトンズ)と、彼に終始励まされる歌手のノニー。17歳のスーザンと10歳になるその弟のロビン。そして、マニーとベルの中年夫妻。

ベルを演じたシェリー・ウィンタース。「太ったおばさん」といえばこの人というくらいインパクトのある女優でした。米国では、年取って太りそうな女性に対し「シェリー・ウィンタースみたいになるぞ」という失礼な冗談があるくらい、若い頃はスリムだったんだそうですが…。それはともかく、かつて水泳選手としてならしたという設定のベルがその太った身体もものともせず、スコットを助けるために果敢に水の中に飛び込んでいくシーンは本当に感動ものです。「自分にも何かみんなの役に立てることがあるはず」、そんな思いがずんずん伝わってきます。今年1月に亡くなったシェリー・ウィンタースの死因は、映画のベルの死因と同じ心臓疾患だったそうです。

ペアといえば、もう一つ、スコット牧師と船の専属神父の会話も興味深いものがあります。神と教会の絶対的な力を解く神父と、牧師でありながらそれを否定するようなことを平気で言うスコット。牧師(プロテスタント)と神父(カトリック)の違いだけでは説明できないものを二人のやりとりから感じます。ラスト近くで、スコットがバルブにぶら下がりながら神を呪う言葉を吐く(「神よ。私たちはあなたに頼らずにここまで来た。もう邪魔するな。いったいあと何人のいけにえがほしいんだ?」)。この言葉は、神に仕える牧師である前に、あくまでも一人の人間であろうとし、そのことを大事にしようとするスコットの信条を表しているような気がします。沈没する船の中で、ひたすら神に助けを祈るばかりではなく、自ら生きようとし、そして周りの人も生き延びさせようとする行動をとることこそ、彼の生き方そのものを表しているのではないでしょうか。

スコット牧師がどんな人物だったのか、なぜポセイドン号に乗り込むことになったのか、なんてことはこの映画では一切描かれていませんが、それなのに、死の危機にさらされた時の彼の行動を追うことによって、スコットという人間や彼の生き方がなんとなく想像できてしまう。いや、彼だけではありません。彼が行動を共にする人々の人生もまた垣間見えてくるのです。その点だけ見ても、この映画のすばらしさがわかりますね。

実はリメイク版「ポセイドン」は見ていません。見ていない癖にこんなこと言うのはいけませんが、「ポセイドン・アドベンチャー」の人間ドラマには遠く及ばないのでは…と勝手に想像しています。

 


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2 コメント

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Unknown (れごまま)
2006-07-12 06:18:30
『ポセイドン』は観ました。『アドベンチャー』は観ていません。このブログを読んで、観なくちゃと思ってます。

『ポセイドン』は確かに人物の描き方が薄っぺらなところはあります。ただ、ほとんどフルCGで作られたと言う映像を「へぇ~」と観るには面白かったです。実写部分は撮影中、何人も病人が出たと言われる水の汚さ・・・(笑)

そうか、バラストが空だったからひっくり返ったのかぁ確かに空だった。。。なるほど。
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バラスト水 (やっぴ)
2006-07-13 00:47:02
「ポセイドン」は、「Uボート」、「トロイ」のウォルフガング・ペーターゼン監督なので、見たい気がしないでもないのですが…。



バラスト水の移動による自然体系の破壊についても興味あります。調べてみたいと思っています。
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