皮だけで立っているブナ/クロベの巨木
四ダム・原始の森ネイチャーツアーガイド養成研修
黒部渓谷の植生は、西の立山側の斜面と東の後立山連峰側の斜面で大きく異なり、その大きな要因として積雪量の多少と融雪期の長短を上げることが出来る。
冬期,日本海から運ばれてきた大量の雪は、立山連峰の後に当たる黒部渓谷側に大きく溜まり、氷河となって山肌を削った結果、立山・薬師岳周辺の黒部渓谷側にはカール(圏谷)が形成されている。
このような多雪地帯では、積雪の重みでも折れないアオノツガザクラ,ヤマハンノキ,ダケカンバ等の植物が群落を形成する。
左岸(立山側)の混交林/右岸(後立山連峰側)の針葉樹群
一方,後立山連峰では、冬期,強い寒風に吹きさらされるため、それに耐えるオオシラビソ,ネズコ(クロベ),ツガ等の常緑針葉樹林が山腹に形成されており、その山稜にはコマクサ,ウルップソウ,ユキワリシオガマ,オヤマノエンドウ等,寒冷砂礫原に生える植物が分布している。
簡単に言うと、四ダムから見て立山側斜面が混交林であるのに対して、後立山側は殆どが針葉樹林である。
特に黒四ダム湖畔の遊歩道のある斜面は、ブナを主体とする広葉樹にネズコやコメツガ,ヒメコマツ等の針葉樹が交じる豊かな混交林で、ブナの純林が極相林をなしているところもある。
ブナの純林/
黒四ダムを訪れる人々にダムの威容と景観に加えて原始の森の素晴らしさを知ってもらうために行ってきたこのガイド研修は、今後も定期的に継続され、また教本や資料集も作成されることになっている。
工事跡を望む(白立山側・10tクレーン車のレール跡)/同・立山側(20tクレーン車)
扇沢発9:00のトロリーバスで四ダムへ。9:15着,堰堤でミーティングした後、ダムの成り立ちや工事の様子等の説明を受ける。
ダムの両端の岩壁に取りつけられた構造物は大型クレーン車を据え付けるためのもので、左岸に20tクレーン,右岸に10tクレーンを置き、両者間を直径10cmのワイヤーで結んで9㎥の生コンクリートが入るバケットを吊るし、移動しながら巨大なダム壁を築き上げたのだそうだ。
展望台の左下のある丸い建物がセメントと砂利・砕石を混ぜてコンクリートをつくった巨大ミキサーで、砂利や砕石は扇沢からベルトコンベアでトンネル内を運ばれたと言う。
崩れた上までが本来の植生/工事後,パイオニア植物が侵入
工事による植生の変化/かんば谷・吊り橋
堰堤を渡ってトンネルに入り、途中で黒部湖駅への道を見送ってトンネルを出ると湖畔の遊歩道につながる。
20分でかんば谷のつり橋に到達するが、この辺りまでは工事の影響で植生が変わり、ヤナギ等のパイオニア植物やカラマツなどが見られ、本来の植生(上の写真の崩れている辺りまで)とは異なっている変わっている。
? 何とかエビネ/アオダイショウがいた/その傍にコイワカガミ
かんば谷を越えるとそこから先はわずかに遊歩道が設けられているほかは手つかずの自然林となる。