群来＜クキ＞

北海道留萌市の北、日本海側をのぼった処に鬼鹿＜オニシカ＞という処がある。かつて、鰊＜ニシン＞漁で栄えたところであった。だから、ここには鰊御殿がある。網元がニシン漁で稼いだ金で、贅を尽くした大きな建物を建てる。多くは海の見渡せる場所に建てたものだ。本州から取り寄せたヒノキや漆などをふんだんに使い、北の大地と海に誇らしげに、その雄姿を見せていた。しかし、正月、私たち、庶民の食卓を飾った数の子が急に高価な食べもになった。ニシンが来なくなったからである。現在、それでも、私たちの手に届くような値段になったのはロシアからの安い輸入品が入ってきているからである。そのニシンの大群が28日、鬼鹿の海岸に現れた。何年振りかで、それもこれほどの大群は見たことも無い程だという。地元ではこのニシンの大群を群来＜クキ＞と言う。このあたりの海岸線はニシンが産卵するには適したところらしい。メスのニシンが卵をうみ、オスのニシンが精子をふりかける。あまりの多くの精子のために、海が白く濁る。カモメなどの海鳥がニシンの大群に殺到する。漁師さんたちも慌てる。産卵前にニシンを取らなければ、貴重な数の子がとれない。それにしても、ニシンの産卵はこんな春だったかしら。（4月29日）

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