あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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やりにくい世の中なのです

2012年10月14日 | うんちく・小ネタ

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食に関するエッセイの名手が池波正太郎であることは言うまでもなく、伝説の名著「むかしの味(新潮文庫)」片手に銀座を食べ歩いた輩がいることを聞いたことがあります。

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そして、料理小説「食道楽(岩波文庫)」の著者、村井弦斎。
明治後期に大ベストセラーとなった本書ですが、なんと食育を勧めるくだりがあるのです。

「体育の根源も食物にあるし、智育の根源も食物にある。してみると、徳育よりも智育よりも体育よりも食育が大切ではないか」

その上、病気の治療に効果があるとされる料理が数多く紹介されていたものですから、日露戦争の出征兵士への贈り物になったり、中流家庭の嫁入り道具になったりもしたのだとか。

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そんな村井先生が、普及に努めた最高の食材ベスト3が 卵、豚肉、クルミでした。

「消費量によって国の文化が知れる」卵、 「安価で栄養満点の」豚肉、 「天然物の食料品の中で最も滋養分が多くて、体に有益な」クルミ。

ならばということで、この3つの食材を同時に使用するメニューを試作する食品加工メーカーがありました。

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まずはベーシックな「豚肉のクルミ揚げ」。叩いて下味を付けた豚肉を溶き卵+片栗粉に漬け、クルミをまぶして揚げます。まあまあの味。外観はクジラの竜田揚げみたいです。

次に、オリジナルの「焼き豚クルミ味噌丼」。味噌、酒、みりん、砂糖、叩いたクルミを鍋で加熱しながら混ぜ、最後に卵黄を加えます。これを焼き豚丼にトッピングして完成。クルミ味噌がアクセントになって美味しい・・。
試食会ではまあまあ好評だったそうですが、若手社員に釘を刺されたのでやめることに。

「卵、豚肉、クルミは3つともアレルギー物質ですよ」  とのこと。

村井弦斎先生もびっくりの、やりにくい世の中なのです。

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