スリランカ料理には定番の「ポル・サンボール」というものがあります。この料理は細かく削った椰子の果肉に唐辛子とレモン汁を加えて練り合わせ、「ウンバラカラ」と呼ばれるモルディブ製かつお節をブレンドするもので、伝統的なご飯のお供だそうです。
実は、このモルディブの「ウンバラカラ」こそが日本のかつお節のルーツであり、現地では14世紀頃から製造していたとされています。
ただ、かつお節製造に欠かせない燻材(薪)が少ないモルディブのかつお節は、ほとんど燻さない「なまり節」のようなスタイルです。
これが16~17世紀頃日本に伝わり、豊かな森のおかげでしっかりと燻す日本製のかつお節が完成したことになります。
ちなみに日本でかつお節を燻す際に使用する薪は、サクラ、カシ、ナラ、クヌギ、ブナ、シイ等の広葉樹で、出来上がりのかつお節と等量の薪が必要となります。日本国内のかつお節生産量が年間約4万トンですから、薪も4万トン使用するということ。
この情報を聞きつけた環境活動家が、世論に噛みついてきました。
「そんなに広葉樹を伐採して、環境に負荷はかからないのですか?植林してますか?」
このご意見に、某国立大学森林学研究室のE教授は心強い回答をしました。
「それは逆です。適度な伐採が広葉樹林を守るのです」
E教授によると、日本の広葉樹林の約4割が放置林。放置されることで葉が茂り、光の差し込まない暗闇となるとか。暗闇なので下草が生えず、下草が生えないから地盤がゆるくなり、土砂災害の危険性が増すというのです。
外の明るさと比べた際の相対照度が40%から10%に下がると、森が保持できる降水量が毎時250ミリから100ミリに減少するらしいのです。
燻材としての広葉樹の伐採が、森にとって正しい間伐かどうかは精査が必要ですが、豊かな森とかつお節づくりが繋がるのですから、さすが伝統食品の懐は深いといえそうですね。
そして、食品とは全く関係のない森林学の大家のご意見を知るきっかけになったことも、かつお節のおかげだと感謝した次第です。