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ファスト

2014年11月26日 | うんちく・小ネタ



ある番組で、にぎり寿司の値段について潜入調査を行う企画をやっていました。
似たような感じの2組のカップルが別々に高級寿司店に入って、全く同じメニューを注文するのですが、片方がよれよれのジャージ姿で、片方がブランド服に身を包んだ成金風。



結果は予想通り、成金風の客の支払い額が圧倒的に高かったのです。
当然ですね。メニューに値段表示がないのはそういうこと。
明朗会計を望むなら回転寿司に行けばいいのですから・・・。


ちなみに、1800年代初頭の江戸市中でも、にぎり寿司は明朗会計のファストフードでした。
かけそば一杯が16文(240円)の当時、にぎり一貫が4~8文(60円~120円)。
確かに回転寿司並みです。
ネタはタコ、ハマグリ、キス、サヨリ、コハダ、クルマエビ、穴子などでマグロは不人気だったとか。
気軽に手早く食べられるから「ファスト」なわけなのですが、にぎり寿司はその生い立ち自体もファストなのです。


古来、寿司といえば魚を米飯に漬けて乳酸発酵させた「なれずし」で、製造には長期間を要していました。
気の短い江戸っ子はとても待てません。

そこで、乳酸をあきらめ、酢酸(お酢)で寿司飯を調整してネタを乗せるだけのファストフードが完成したのだそうです。



ここで重要なのがお酢の開発。家業の酒造りにおいて禁忌とされる酢酸発酵にあえて取り組み、にぎり寿司を企画した花屋與兵衛のリクエストに応えてお酢を供給したのが、尾張の中野又左右衛門。ミツカンの創業者です。
中野家が酒造メーカーからお酢メーカーに転換を図った19世紀、日本人にとっての酸味が乳酸から酢酸に変わったのでした。



自然界にほとんど存在しない酢酸が、主役に躍り出るほどのファストフード革命。
やはり、反対されるようなことに取り組まなければ時代は創れないのでしょうか。

・・・なんとなくコハダをつまみたくなりました。


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