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チック・コリア・エレクトリック・バンド/インサイド・アウト

2010年01月26日 00時03分30秒 | JAZZ-Fusion
 1990年発表の第4作。前作はそれまでの2作にあったテクノロジーの追求、ポップ指向といったものへの反動といった趣の強かったが、幻想味やスパニッシュ風味という点ではみるべきものがあったものの、これだけのメンツを集めた割にはいささか地味過ぎたきらいがなくもなかった。きっとチック・コリアは本作の制作にあたり、この辺を大いに意識したのだろう。1曲目のタイトル・チューンこそ、当時流行のメロウなポップ・フュージョンではあるものの(マリエンサルのサックスがまるでデビッド・サンボーン-笑)、それ以外はまるで前作で欲求不満を解消するかの如く、全編に渡ってCCEBというテクニック集団の特性を生かした、-かつての作品でいえば-「スリー・カルテッツ」的なゴリゴリ感にバルトーク的なシリアスさが満載されたけっこうハードコアな作品となっている。

 二つのパートのメドレーからなる「メイク・ア・ウィッシュ」は、バルトーク風なイントロから、実に込み入ったキメと4ビートが縦横に交錯するかなりテクニカルな本編となる。ソロはギャンバレ、マリエンサル、コリアの順でスピーディーに展開、ハイライトはギャンバレのアラン・ホールズワースを思わせるギター・ソロか、ウェックルとパティトゥッチのリズム隊もここぞとばかりの活躍振りで実に爽快なプレイを展開している。やはり2部からなる「ストレッチ・イット」もバルトーク風なテーマから、第二部ではメローなフュージョン的な要素も目配せしつつ、やはり各メンツのソロをふんだんに配置して、高テンションな演奏を展開している。アルバム中最長の大作「テイル・オブ・デアリング」は4パートからなる組曲で、シリアスな導入から、第二部では「メイク・ア・ウィッシュ」と同樣なソロ・パートが展開され、第3部ではまさにバルトークとしかいいようがない、複雑極まりないリズム的なテーマ(ピアノとドラムのユニゾン)が展開され、ギャンバレのギター・ソロも追い打ちをかけて、この大作のハイライトとなっている。

 という訳で、個人的にはCCEBといえば、これまで本作をもっとも愛聴してきたせいもあるが、これが一番バンド面の資質がよく出た作品なのではないかと思う。シリアスやハード路線といっても、当時所属していたレーベルがGRPということもあって、ある程度はポップさにも目配せしており、このあたりのバランスが、実のところ一番このメンツには合っていたのではないかと思ったりもするのだが、どうだろうか。まぁ、少なくとも前二作よりデビュー作や「ライヴ・フロム・エラリオズ」、そしてCCABを愛好する私のようなムキには、このアルバムの随所に展開されるスリリングなインタープレイは掛け値なしに価値があるものだと思う。

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