2001年に発表された渡辺香津美としては珍しい「ウィズ・オーケストラ・アルバム」。当時の渡辺はレゾナンスヴォックス以降、「MO'BOP」でまでの時期は、尖ったジャズ・ロック/フュージョン路線から後退して、アコギを中心したものや比較的オーソドックスな4ビート、クラシカル路線といった多方面に音楽的翼を広げていった活動期に当たる。本作などまさにそうした一連の試みのひとつとして出来上がった作品といえるだろう。
基本バンドは渡辺の他、キーボードに笹路正徳、ベースが高水健司、そしてドラムスに山木秀夫(なんのことはない清水靖晃こそいないが、往年のカズミ・バンドそのものである)、これに何人かのゲスト、そしてビッグ・バンド+ストリングスという布陣で収録されている。ライナーを読むと、どうやら「ウィズ・オーケストラ物を作る」というアイデア自体はかねてから笹路正徳がもっていて、セッションギタリストの時の渡辺の瞬発力、反応の良さのようなものが欲しくて、彼に声をかけたというものらしい
内容的には昔のCTIのイージーリスニング・ジャズをもう少し硬派にしたような仕上がりである。一曲目の「カヴァティーナ(映画「ディア・ハンター」のテーマ)」がいくらかクラシカルなアコギをフィーチャーしたニューエイジ風なギター協奏曲、そして8曲目の「ボナペティ」がアコギのソロではあるが、後はきちんとリズムセクションが加わったジャズ・ミュージックだ。収録曲では既成の曲(ミンガス、バカラック、ローラ・ニーロなど)が多いが、渡辺の「ロンサム・キャット」や笹路の「マジック・ランド」なども再演されている。
笹路のアレンジは日本人らしくクラウス・オガーマン風の暗いトーン、オリバー・ネルソン風なダイナミックさ、ドン・セベスキー的な色彩感などいろいろな手駒を披露して器用なところを見せているが、やはり基本的にはCTIの一連のアルバムがモデルとしてあったように感じられる。それを受けた渡辺もおそらくそうしたコンセプトとすぐに察知したのだろう、ほぼ全編に渡りウェス・モンゴメリー風なギターワークを披露しているのは興味深いところだ。演奏としては、いかにも70年代後半のAORといった感じの、デイブ・グルーシン風AORなアレンジで再演された「ロンサム・キャット」が良かった。
という訳で、購入時に一聴してあまりピンとこなかったアルバムなのだが、久しぶりに聴いたらなかなかその渋さが味わい深い仕上がりなのでちょっと驚いているところである。ただ、なんとしても惜しいのは、オケのアレンジにコクというか雰囲気が乏しい点か。CTIの往年のアレンジャーたちのオーケストレーション比べると、確かにそれらしい音はなっているのだが、どうも「何かが違う」という感じがしてしようがない。難しいところである。
ちなみに往年のカズミバンドが揃っているが、さすがにアルバムのコンセプトがオケとの共演という枠が大きかったのか、カズミバンド的な尖ったバンドプレイはほぼ皆無といってもよく、3人とも非常にコクのあるプレイではあるが、基本的には律儀にセッション・ミュージシャン的な手堅いプレイに終始している感じだ。
基本バンドは渡辺の他、キーボードに笹路正徳、ベースが高水健司、そしてドラムスに山木秀夫(なんのことはない清水靖晃こそいないが、往年のカズミ・バンドそのものである)、これに何人かのゲスト、そしてビッグ・バンド+ストリングスという布陣で収録されている。ライナーを読むと、どうやら「ウィズ・オーケストラ物を作る」というアイデア自体はかねてから笹路正徳がもっていて、セッションギタリストの時の渡辺の瞬発力、反応の良さのようなものが欲しくて、彼に声をかけたというものらしい
内容的には昔のCTIのイージーリスニング・ジャズをもう少し硬派にしたような仕上がりである。一曲目の「カヴァティーナ(映画「ディア・ハンター」のテーマ)」がいくらかクラシカルなアコギをフィーチャーしたニューエイジ風なギター協奏曲、そして8曲目の「ボナペティ」がアコギのソロではあるが、後はきちんとリズムセクションが加わったジャズ・ミュージックだ。収録曲では既成の曲(ミンガス、バカラック、ローラ・ニーロなど)が多いが、渡辺の「ロンサム・キャット」や笹路の「マジック・ランド」なども再演されている。
笹路のアレンジは日本人らしくクラウス・オガーマン風の暗いトーン、オリバー・ネルソン風なダイナミックさ、ドン・セベスキー的な色彩感などいろいろな手駒を披露して器用なところを見せているが、やはり基本的にはCTIの一連のアルバムがモデルとしてあったように感じられる。それを受けた渡辺もおそらくそうしたコンセプトとすぐに察知したのだろう、ほぼ全編に渡りウェス・モンゴメリー風なギターワークを披露しているのは興味深いところだ。演奏としては、いかにも70年代後半のAORといった感じの、デイブ・グルーシン風AORなアレンジで再演された「ロンサム・キャット」が良かった。
という訳で、購入時に一聴してあまりピンとこなかったアルバムなのだが、久しぶりに聴いたらなかなかその渋さが味わい深い仕上がりなのでちょっと驚いているところである。ただ、なんとしても惜しいのは、オケのアレンジにコクというか雰囲気が乏しい点か。CTIの往年のアレンジャーたちのオーケストレーション比べると、確かにそれらしい音はなっているのだが、どうも「何かが違う」という感じがしてしようがない。難しいところである。
ちなみに往年のカズミバンドが揃っているが、さすがにアルバムのコンセプトがオケとの共演という枠が大きかったのか、カズミバンド的な尖ったバンドプレイはほぼ皆無といってもよく、3人とも非常にコクのあるプレイではあるが、基本的には律儀にセッション・ミュージシャン的な手堅いプレイに終始している感じだ。
音楽の良し悪しは、音のダイナミックスで計れる訳ではないが、総じて渡辺香津美さんのアルバムは音が細いと思う。音が前に出ないと言おうか。
海外のアーティストのアルバムと続けて聞いたら、「このカズミ・ワタナベと言うギタリスト、アジアの人? テクニックはすごいがガツンと来るものがないなぁ」と、外国人は思うんじゃないでしょうか?