Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

CHICK COREA'S ELEKTRIC BAND II / Paint the World

2010年01月28日 23時25分51秒 | JAZZ-Fusion
 コリアとマリエンサルを除いてメンツが一新され、バンド名の最後にも「II」がついたCCEBの93年の作品、新メンバーはギターにマイク・ミラー、ベースがジミー・アール、ドラムがゲイリー・ノヴァクの4人、新人という程でもないが、さして有名でもない「無名の凄腕」を集めてくるのは、RTFや初代CCEBと同じパターンで、ここに集められたメンバーも初代CCEBほどではないが、確かな腕前のメンツではある。このバンドは本作が余り話題にならず、なし崩し的にフェイドアウトしてしまったことから、現在ではほとんど忘れられてしまっているが、それは集められたメンツの力量不足というよりは、コリアの指向した音楽の変化ということのが大きかったと思う。RTFでいえば調度「ミュージック・マジック」みたいなもので、バンド・フォーマットでやりたいことをやり尽くした後で、コリア自身がやりたい音楽を暗中模索していた時期にもろにぶつかったのが災いしたとしか思えない。

 本作ではきっちりかっちりしていた初代CCEBに比べ、音楽そのものがリラックスというか、ある意味レイドバックしているのが特徴である。具体的にいえば、前作までの都会的なポップさからよりアーシーで多少ブルージーなセンスが目立ち、サウンド的にもどちらといえばCCAB的な生バンド的な感触を大幅に取り入れ(コリアはEピアノに大々的に回帰している)、ライブな音作りになっている。これは新メンバーによってもたらされた音楽変化というよりは、おそらくコリアが予め決めていたコンセプトだったのだろう(マリエンサルの演奏スタイルが微妙に変化している点に注目)。その意に沿った形で演奏を繰り広げたメンツの演奏がいささか地味になったのは、その意味では必然でもあった。ことにウェックルとパティトゥッチのコンビに比較された、本作でのジミー・アールとゲイリー・ノヴァクはさぞやプレッシャーだったであろうと思うが(笑)、新メンバーが従来型の演奏をして、クウォリティ的に全く遜色がないことは、例えば4曲目「CTA」のトリッキーなリズムをちょっと粘っこいグルーブ感でなんなく乗り切っているパフォーマンスを聴けば良く分かろうものである。

 収録曲では、前作と同様、前半に比較的ポップでコンパクトな楽曲が並び、後半に行くに従って込み入った曲、或いは大作がお出ましになるという構成になっている。前述のとおり「CTA」、あと「Ished」あたりは従来型のトリッキーな楽曲で楽しく聴ける。「Ant and the Elephant」も8ビートと4バートが複雑に交錯するCCEBらしい楽曲だが、ちとレイドバックしすぎでイマイチ盛り上がりに欠ける点を感じないでもない。「Ritual」はCCAB的なコンセプトでまとめたアコースティックな曲、アールとノヴァクのうねるグルーブ感が従来とは違ったムードを出していて、ひょっとするとこの曲あたりに「II」の未来があったのかも....という気にさせる聴き応えあるナンバーだ。「Spanish Sketch」はお約束ともいえるスパニッシュ調の楽曲で、これはほとんどRTFに回帰してしまった仕上がりになっていて、そろそろCCEBのコンセプトがここで行き詰まってきたことを如実に感じさせたりもする。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« KING CRIMSON / In the Court... | トップ | MANDALABAND III / BC-Ancestors »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

JAZZ-Fusion」カテゴリの最新記事