変身人間シリーズの最終作である。内容的には肝心の変身人間が「美女と液体人間」のスタイル、つまり間な形状に変身したまま(電送人間やガス人間のように普通の肉体と変身を行き来できず、変身した時点で人間的な知性も感情もなくなってしまっている)、人間に襲いかかってくるパターンになっている。ただし、全体の雰囲気やトーンは「液体人間」とは異なっていて、よくも悪しくも孤島でのサバイバル劇みたいなところがあるのが特徴だろう。ブルジョアのグループがヨットで出かけたはいいが、難破して孤島に漂着、そこには食い物になるようなものが何もなく、次第にエゴむき出しの葛藤がおこり、ひとりひとりとマタンゴというキノコ人間の餌食になるというストーリーは、ある意味ワン&オンリーな趣もあるである。また、この作品は63年の作品で、58年「美女と液体人間」とは5年くらいのインターバルしかないのだが、おそらく高度成長期にスタートを切った日本のムードが反映しているのだろうか、ブルジョア達が主人公とはいえ、この作品にそこかしこに漂う妙に明るい活気のようなものは、そうした豊かになりつつあった日本の勢いを感じさせたりもする。
音楽は別宮貞雄、1922年生まれの純クラシック畑の人だが、ご多分にもれずアルバイトだったのか、昭和30~40年代の映画量産期に東宝で何本かの映画音楽を担当している。これはその数少ない1本のようだ。別宮はパリ音楽院に学び、ダリユス・ミヨーやオリヴィエ・メシアンに師事しているというから、ルーツはフランス音楽にありそうだが、ここで聴ける音楽はむしろストラヴィンスキー的であり、当時に彼が聴いていたのかどうかは分からないがバーナード・ハーマン的というか、とにかくニューロティックな音響を多用しているが印象に残る(単に私がフランスのこの手の音楽をよく知らないというだけかもしれないが-笑)。また、当時の東宝映画の「お約束」であるキャバレー音楽なども妙に歌謡的なセンスを感じさせるキャッチーな曲を書いているし、オープニングのまるで若大将シリーズでも使えそうな都会的で軽快メインタイトルで、けっこう下世話な魅力にも事欠かないのはなかなかだ。その後「国際秘密警察」「駅前」シリーズを手がけることになるのもさもありなんといったところか。
音楽は別宮貞雄、1922年生まれの純クラシック畑の人だが、ご多分にもれずアルバイトだったのか、昭和30~40年代の映画量産期に東宝で何本かの映画音楽を担当している。これはその数少ない1本のようだ。別宮はパリ音楽院に学び、ダリユス・ミヨーやオリヴィエ・メシアンに師事しているというから、ルーツはフランス音楽にありそうだが、ここで聴ける音楽はむしろストラヴィンスキー的であり、当時に彼が聴いていたのかどうかは分からないがバーナード・ハーマン的というか、とにかくニューロティックな音響を多用しているが印象に残る(単に私がフランスのこの手の音楽をよく知らないというだけかもしれないが-笑)。また、当時の東宝映画の「お約束」であるキャバレー音楽なども妙に歌謡的なセンスを感じさせるキャッチーな曲を書いているし、オープニングのまるで若大将シリーズでも使えそうな都会的で軽快メインタイトルで、けっこう下世話な魅力にも事欠かないのはなかなかだ。その後「国際秘密警察」「駅前」シリーズを手がけることになるのもさもありなんといったところか。
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