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CHICK COREA / The Leprechaun

2006年02月13日 00時08分11秒 | JAZZ-Fusion
 RTFの「浪漫の騎士」と同年に発表されたソロ名義の作品です。この年のチックは非常に多作で、ソロ名義としては他に2枚組の大作「マイ・スパニッシュ・ハート」、ついでにジャレットやハンコックと共演したライブも出していますから、まさに四面楚歌の活躍振りといったところだったのでしょう。音楽面ではRTFのバンドとしてやるべきことにそろそろ限界を感じ、ソロに新たな活路を見いだしたというところだったのかもしれません。

 アルバム冒頭は、シンセ多重による「インプス・ウェルカム」という曲。チックは楽器オタクみたいなところがあって、新しい楽器が出るとそれにインスパイアされて、それ向きな楽曲をつくるみたいなところなきにしもあらずでしたけど(80年代はヤマハのDXにどっぷりでした、この時期だとミニ・ムーグやアープ・オデュッセイといったところでしょうか)、この曲も飛び道具で遊んでみた1曲というところなんでしょう。

 ただし、それ以降の曲はドラムスにスティーブ・ガッド、ベースがアンソニー・ジャクソン(もしくはエディ・ゴメス)というピアノ・トリオをベースに、ゲイル・モランのヴォーカルとチック自らのシンセを随所にフィーチャーした、割とアコスティック色が強い音楽になっています。誤解を恐れずにいえば、RTFの第2作「ライト・アズ・ア・フェザー」あたりでいったん棚上げしていた音楽を再び発展させたとみることも可能で、2曲目「レノーレ」で、ゆったりとしたサウンドにのって、スペイシーなシンセ・ソロが登場したり、3曲目の「夢想」,4曲目「世界を見つめて」で、女性ヴォーカルが現れるあたりは、RTF初期の浮遊感を思い起こさせずにはいられません(エレピがアコピに替わったということはありますけど....)。

 一方、5曲目の「夜の精」では同時期のRTFと共通する複雑なキメや変拍子を多用したゴリゴリ感の強いハードな作品ですし、6曲目「ソフト・アンド・ジェントル」にはバルトーク風なストリングスが聴こえてきたりもします。また「ピキシランド・ラグ」もどちらかといえばバルトークや新古典派を思わせるシニカルなユーモアを感じさせる作品で、前記のRTFの延長線では語れない要素も散見するのも事実。アルバムのコンセプトとしては、そこまでに鏤められた音楽的ファクターをオーラスの大作「妖精の夢」で、一気に全て統合してしまおうと意図しているようですが、どうもこれまで提示された音楽にヴァリエーションがありすぎて、まとめあぐねているような印象もあります。

 そんな訳で、このアルバム、少しばかりとっ散らかってまとまりがないと感じてしまいました。部分的にはきれいだったり、カッコ良かったりする訳ですが、いかんせん、このアルバムでメインに出したいであろう「妖精」という幻想的なコンセプトには収まりきらなかったという気がするんですが、どうでしょう?。

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2 コメント

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TBありがとうございました (Oimizu)
2006-02-14 04:24:18
毎日これだけ更新されているなんて、すごいですね。

TBできそうなページ見つけたら、TBしたいと思います。



車の中でこのアルバムを聞いていたら、同乗していた小学生の娘がいたく気に入ったようでした。車に乗るたびにリクエストされていました。
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re:TBありがとうございました (webern)
2006-02-14 10:32:31
あぁ、なるほど、そういう観点から見ると受けそうな音楽かもしれませんね。私など「ジャズはかくあるべし」「ロックはこうでなくちゃ」「クラシックというものは」みたいな固定観念があるんでしょうね。こういうボーダレス状態な音楽だと、頭でっかちに考えがちで、素朴に音を楽しむということを忘れてがちなのも....。では、これからもよろしくお願いします。
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