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バッハ シャコンヌ/エドナ・スターン

2009年05月01日 23時16分45秒 | クラシック(一般)
 おもしろい趣向のアルバムである。バッハのシャコンヌを3つのピアノ編曲版で楽しめるもので(オマケでヴァイオリンによる原曲も最後に入っている)、エドナ・スターンという若手の女流ピアニストが弾いているのだが、個人的に一番興味をそそられたのはブラームスによる左手による編曲だ。恐らく有名な作品だったのだろうが、大のブラームス党である私もバッハ作品の編曲となると、興味の範疇の外だったのか、これまで全く知ることがなかった。ブラームスという人は作品番号がついていないピアノ練習曲とかにも、けっこう看過できない作品があったりするのだが、この作品もそういう部類なのだろう。

 で、このブラームス編版だが、左手一本にしてはかなりよく出来ている....というか、そもそもヴァイオリン・ソロの曲なのだから、物理的な条件としては片手くらいでも、曲を再現するには十分といったところなんだろう。聴こえない音はないし、これはこれで紛れもない「バッハのシャコンヌ」になっていると思う(これがどう弾いてバッハになってしまう....バッハのバッハたる所以か)。ついでに原曲を律儀にトランスクリプションしていくのはいかにもブラームスらしい生真面目さが感じられるし、ブゾーニ版のでは大きく盛り上がった前半のクライマックスでも、片手だから出来なかったのか、そうしなかったのは、よくわからないけれどそこにブラームス的な節度が感じてしまうのは、私の贔屓目が過ぎるだろうか?。

 一方、エドナ・スターンのためにルドルフ・ルッツという人が編曲したヴァージョンだが、さすがに新しい編曲だけあってモダンな響きに満ち満ちている。冒頭からしてまるで印象派のような柔らかい響きの和音から始まる。さすがにシャコンヌの構造そのものまでは変えていないようだけれど、ブゾーニのようなはハイな熱狂はなく、終始、低カロリーでクリーンなムードで進んでいく。女性が聴いたら喜びそうな柔らかいタッチ、お洒落な雰囲気が特徴の編曲といえようか。
 ちなみにエドナ・スターンという女流ピアニストだが、ブゾーニ版であんまり肩を怒らせることなく、落ち着き払った演奏をしているあたり、この人の特徴かもしれない。ちなみにこういうアルバム作るくらいだから、テクニック的にも素人耳にも十分な上、全体に極めて安定していているから安心して聴いていられる。

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