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坂本龍一/ハートビート

2007年08月11日 23時08分03秒 | JAPANESE POP
 1991年に発表された作品、詳しいことはよく覚えていないか、確かオリジナル・アルバムはヴァージンからワールド・ワイドで発表、サントラはベルトリッチ作品を連続して担当するなど、坂本がもっとも「世界の坂本」らしい活躍していた時期に当たっていたと思うが、このアルバムはオリジナル・アルバムとしてはその掉尾を飾る作品といえる。何故かというと、これ以降の坂本のオリジナル・アルバムはフォー・ライフに移籍したのに歩調を合わせるように、主として国内向けのスタンスで作るようになったからだ(少なくとも日本国内から見た、私にはそう思える)。

 私の思うに、「ネオ・ジオ」「ビューティ」 そして、本作は坂本の「ワールドワイド三部作」といいたくなる作品である。一体、彼がこれらの作品をどの程度世界で「受ける」と思っていたか分からないが、東洋的エキゾシスムを戦略的な「売り」にしつつ、アジア的な視点で無国籍を、圧倒的な情報量の音楽として構築した点は評価していいと思う。ただ、これら三部作は子細に眺めていかなくとも、アヴァンギャルドな音響的なユニークさのようなものは次第に後退し、どんどんポップになっていくのは明らかだ。その原因を考えるに、やはりこの「ネオ・ジオ」「ビューティ」といったアルバムは、世界的にみて、彼が思っていたほどには「受けなかった」ことが原因となっているのではないか。

 これはあくまでも私の視点からの想像だが、この「ハートビート」という作品は、いわば前2作の不振から、坂本が勝負をかけた作品のように思えて仕方がない。当時、シーンを席捲してハウス・ビートを大々的に導入し、ソウル・トゥ・ソウルあたりから注目されたバリー・ホワイト的な洗練されたポップ・センスをまぶして、しかも、坂本的な音楽的なコアは犠牲にしないという、かなりきわどい音作りになっているが、それがぎりぎりのところでバランスしているのは、さすが坂本龍一としかいいようがない。ただし、そうした水際だった音づくりな割に、これがセールス的に成功したのかというと、どうでそうでもなさそうだったから、彼はオリジナル・アルバムというポジションでは国内に目を向けざるを得なかったというところだと思うのである。

 ともあれ、この作品、この時期の坂本龍一の最高傑作ではないか。特に前半のハウス・ビートと坂本サウンドの合体、ポップさと実験性のきわどい綱渡りが、絶妙にバランスして坂本でしかなしえないサウンドになっているし、2曲のボーカル作品のポップさも楽しい。夏のドライブにさらっと流してもイケるし、ヘッドフォンで聴いてもその豊富な音楽的情報量の巧緻な組み立てに感心するも良し....という訳だ。

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