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ハイドン 交響曲 第38番『こだま』/フィッシャー&オーストリア・ハンガリー・ハイドンPO

2009年12月19日 11時25分52秒 | ハイドン
 全4楽章、演奏時間が約16分という比較的こじんまりとした交響曲です。第1楽章は序奏なしにティンパニを伴っていきなり第1主題から開始されますが、多少ありきたりに宮廷風な第1主題、リズム的なおもしろさはあるものの、とりたてて印象にも残らないような第2主題を使って、主題を縦横に操作する展開部が充実していて5分半程度の規模であるにもかかわらず、大きなスケール、山あり谷ありの起伏で、ベートーベンを思わす聴き応えがあります。この曲は作品表によるとシュトルム・ウント・ドランク期の作品に分類されていますが(この曲は短調ではなくハ長調ですが)、やはりこの時期ともなると、ハイドンも交響曲という様式を完全に自家薬籠中の物としはじめたのでしょう。素材自体の価値はともかく、交響曲という器に、いかに豊富な音楽情報を盛り込み、どれだけ充実した作品に仕上げることができるか....そんな点にかなり傾注している様が、この楽章からもうかがえるような気がします。

 第2楽章はしすしずと進みつつも、多少リズミカルなところもある緩徐楽章ですが、途中第1ヴァイオリンの音型を、第2ヴァイオリンが追っかけるところがあり、このディレイのような効果がおもしろく、この曲の標題を「エコー」だとか「こたま」とするポイントになったようです。第3楽章は2分ちょいで終わる小振りなメヌエットで、オーボエがうねうねと三連で綴られるトリオが印象的ですが、ここではむしろメヌエットとトリオがきっちり対象して、小振りながらもけっこう風格ある音楽になってもいるところがいいです。最終楽章はなんとなく爆発しそうでしないところがありますが、第1楽章の精力的な感じを再現しつつ、途中でオーボエがフェイントをかけるように入ってくるところが印象的です(ブラームスの交響曲第2番の第3楽章にもこういう場面がありましたが)。この曲には前述のとおり「エコー(こだま)」という標題がついている訳ですが、自分ならここをとって「フェイント」としたかもしれませんね。

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