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B.HERRMANN / Jane Eyre

2007年12月25日 22時11分50秒 | サウンドトラック
 という訳で、ハーマンが作った「ジェーン・エア」のサントラである。オリジナル・サウンド・トラック盤については、以前レビュウしたので今回はスコア盤を聴いてみた。ナクソスの傍系レーベルであるマルコポーロから1994年に出たもので、同レーベルの裏看板となった感もある「Film Music Classics」のごく初期発売分である。演奏はアドリアノ指揮のスローヴァーク放送響で、おそらくほぼ全曲に近い形で収録されている。先のサントラは30分程度の抜粋、その後にハーマン自身が振ったのは10分程度の組曲版だったから、デジタル録音でこうした全曲盤があるのはありがたい(そろそろヴァレーズ・サラバンデが再録するような気もするが)。

 さて、映像を観ながら聴いたハーマンの音楽の感想だが、あまり傑作とはいえないあの映画をとにもかくにも最後まで観客を惹きつけ続けたのは、やはり出演者の貫禄や熱演振りにあったのは当然だとしても、やはりハーマンの音楽の魅力というのもかなり大きな部分があったように思った。この映画はゴシック・ロマン的なムードや館物特有の謎めいたムードが横溢しているが、その重厚さ、格調高さ、そしてミステリアスさを、一気に高めたのがハーマンの音楽といってもおかしくないと思う。「市民ケーン」でもお馴染みの木管を組み合わせた鬱蒼とした音使いや霧の中で初めてウェルズと遭遇するシーンやふたりが結婚を約束する落雷のシーンなど衝撃的な不協和音を伴っていて特に印象的だ。おそらく当時としてはかなり思い切った音の選び方だったはずだ。また、フォンテーンとウェルズの二人が秘めた癒しがたい恋愛感情を表現しているのが、劇中何度もリピートされるメイン・テーマであり、すぐに手の届くところにいながら、なかなか手の届かず、切ないまでに高まり続ける主人公たちの悲劇的な感情を絶妙に表現している。

 ともあれ、以前のサントラのところでも書いたけれど、ハーマンはこの手のニューロティックな愛の音楽を得意としていて、これは、その後作り出す大傑作「めまい」「マーニー」「愛のメモリー」といった系列の作品群の一番最初に位置する傑作ということでも忘れられない作品だ。映画そのものは何度も観るようなものではないと思うが、やはりこの音楽だけはこれからも何度も聴くことになると思う。ちなみにアドリアノ指揮のスローヴァーク放送響のバフォーマンスだが、基本的に今どきなシェイプしたリズムとあっさりとした表情で最後まで演奏している。映画の雰囲気を味わうならもう少し濃厚な表情をつけるべきだろうが、独立した音楽として楽しむならこれはこれでありだと思う。

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