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ワーグナー 管弦楽名曲集/バレンボイム&シカゴSO

2007年04月03日 23時18分23秒 | クラシック(一般)
 バレンポイムといえば、80年代くらいまではアバドやメータと並ぶ中堅のスター指揮者として、グラムフォンやEMIの新譜の常連だったけれど、現在はどうなのだろうか。この人、昔からブルックナーは得意だっだけれど、マーラーをあまり振らないのは、現在でも同様らしく(全く振らない訳でもないだろうけれど)、アバドのようにマーラーの新録を出し続けている人に比べると、ベートーベンだとかブラームスの交響曲全集を出しても、いきおい地味な印象を持ってしまう。ついでにいえば、バレンポイムは91年にショルティの後任としてシカゴの首席になっている訳だけど、以来、このコンビはどうもこれといったヒット・レパートリーがないのか、あまり商売になっていないようなのもつらいところだ(やはりショルティの後任には、誰もが望んだようにアバドが行くべきだったのでは?)。

 さて、このアルバムはバレンポイムがそのシカゴと組んだワーグナー集だ。バレンポイムは81年に初登場以来、すっかりバイロイトの常連となり、いわばワーグナー指揮者としての名声もある程度は確立したはずだから、ある意味これは得意なレパートリーといってもよいはずだ。だが、どうもそつなくこなしているという感じで、決して悪くはないのだが、これといって「売り」もないような気がする。この手のオーケストラ・ピースというと、CDを聴く上でのライバルは、それこそカラヤンやべームなんかの高カロリーなものも、その対象となってしまう訳で、この現代風にあっさりと流れるワーグナーはどうしてもちと食い足り感じがしてしまうのだ。しかもあっさりと流れる割に、バレンボイムのリズムはけっこうねちっこいところもあり、「マイスター・ジンガー」とか「オランダ人」といったアレグロの曲では、重厚に迫るのか、いきおいや推進力のようなものフィーチャーするのか、そのあたりがちとアンバランスに感じてしまい、決め手に欠く印象がしてしまう(シカゴの金管の迫力はさすがだが....)。

 ただし、「トリスタンとイゾルデ」「ローエングリン」のような「うねり系?」の曲では、彼のねちっこさが曲の性格とうまくマッチしていて、けっこう聴かせてくれる。特にに前者は流れるように演奏される弦のみずみずしい響きが素晴らしく、スポーティーな面とワーグナー的な執拗さがぎりぎり折り合った結果、モダンだがワーグナーらしさにも不足しないなかなかの演奏になっていると思う。また、前奏曲らしい雰囲気を十分に盛り上げていて、ラストのピチカートの後、すぐに劇が始まりそうなくらい雰囲気的に盛り上がるのは、やはりバイロイトの経験が物をいっているだろう。
 ちなみに録音は、あまり神経質なタイプではないが、裏で鳴っている旋律や楽器が非常によく聴きとれるなかなかの名録音といえる。ついでにいえば、オケの各楽器の輪郭がくっきりと聴こえるマルチマイク的なバランスは今時珍しいといえるかも。今時といっても94年の録音だから、もう大分昔になるが....。 

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