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坂本龍一/スウィート・リヴェンジ

2009年07月24日 23時25分16秒 | JAPANESE POP
91年の「ハートビート」から3年を経て94年に発表された作品。「ハートビート」のとこにも書いたが、ソロ作品という側面でいうと、坂本龍一はワールドワイドな展開については「ハートビート」でもってとりあえず後退させ、この作品から明確に国内向けに舵を切ったような印象を受ける。これまでの数作で頻出したアヴァンギャルドでハイブリッドなインストやソウル色をほぼ一掃、全曲にボーカルをフィーチャーさせ、表向きあまりポップな体裁をとっている作品ばかりで構成されているあたりからそう思う訳だけれど、アルバム全体がいつも粘着質な音作りではなく、サラサラとしてあっさりとしたものになっているのもそうした印象を倍加している。
 なお、日本での発売元はなんとフォーク系のフォーライフ、そういえば本作には今井美樹が参加しているし、彼女のアルバムのプロデュースなどもしているから、その路線変更ぶりはけっこうあざといものすらあった。なお、この路線が決して気まぐれでなかったことは本作に続く「スムーチー」でも、ほぼ同様の路線がとられたことでも分かる。

 さて、そんなポップな「スウィート・リヴェンジ」ではあるが、個人的にはけっこうな愛聴盤である。なにしろ、このアルバム。「ハートビート」「サマーナーブス」あたりと並ぶ、坂本が出した「夏物」の傑作といえるからだ。特に好きなのは後半の4曲で、アズテック・カメラのロディ・フレイムをフィチャーし、ブリティッシュ・ロックとリゾート・ミュージックが一緒くたになったような10曲目「Same Dream, Same Destination」、アート・リンゼイをフィーチャーしたニューヨーク風なボサノバ作品である11曲目「Psychedelic Afternoon」の乾いた抒情(ついでにいうと坂本のリチャード・ティー風なエレピが実にいい感じ)、ラターシャ・ナターシャ・ディグスのラップ....というかモノローグにリズム隊抜きのあっさりとしたバックをつけた12曲目「Interruptions」の脱色した日常風景みたいなリラクゼーションなど、どれも夏に聴くと実に心地よい作品なのだが、極めつけは8曲目の「アンナ」で、いかにも日本人が好みそうな哀愁と抒情の旋律をベースに、ヨーロッパ風なクールなエレガントな雰囲気をボサ・ノヴァに合体させた素晴らしい作品だ。

 そんな訳で、今年も坂本の夏物ばかりを集めたコンピレーションCDを作ってみた。なんだか、イリアーヌ・エリアスと交替で一年おきに、こんなの作っているような気もするが(笑)、今回作った構成は以下のとおり。前半「ハート・ビート」、中盤「ビューティー」&「ネオ・ジオ」、後半にくだんの「スウィート・リヴェンジ」の4曲ということになっている。前述のとおり「アンナ」は私の大好きな曲なので、2曲づらしてハイライトに配置したあたり、自分の好みがモロに出ている。ちなみに最後の2曲は「サマー・ナーブス」だが、これは音楽的な傾向が違いすぎるので、余白のボーナス・トラック扱いってところ。計16曲、76分ぎりぎり収録である。もっといれたい、いれるべき曲はあるのだろうけど、とりあえず今年はこれで満足。


01 Heartbeat (Heart Beat_'94)
02 Rap the World (Heart Beat_'94)
03 Triste (Heart Beat_'94)
04 Lulu (Heart Beat_'94)
05 High Tide (Heart Beat_'94)

06 You Do Me (single '89)
07 AMORE (Beauty '89)
08 Free Trading (Neo Geo '87)
09 After All (Neo Geo '87)

10 Same Dream, Same Destination (Sweet Revenge_'94)
11 Psychedelic Afternoon (Sweet Revenge_'94)
12 Anna (Sweet Revenge_'94)
13 Interruptions (Sweet Revenge_'94)
14 Sayonara (Heart Beat_'94)

15 Sweet Illusion (Summer Nurves_'79)
16 Neuronian Network (Summer Nurves_'79)


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