Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

スーパーマンII <リチャード・ドナーCUT版>

2009年09月06日 21時03分59秒 | MOVIE
 PS3購入と一緒にレンタルして確か7月4日に観た作品。近年はDVD発売時に劇場公開とは違ったヴァージョンを発売することが多いが実に多い。多くは劇場公開に際して、主に制作サイドから横やりによって、刈り込まれることをやむなきに至ったシーンを復活させて、長尺ヴァージョンとして発売することが多いのだが、これの走りとなった「ブレードランナー」の例からも分かるとおり、単に原版にシーンを付加しただけではなく、作品そのものの様相を変えてしまうような版になっていることも少なくない。この「スーパーII」なども、その制作プロセスの紆余曲折ぶりから、きわめて珍しいヴァージョンになっている。

 「スーパーマンII」はリチャード・レスター監督の名義で1981年に公開されているが、実は前作の段階で、リチャード・ドナーのメガホンの元「スーパーマンII」分も多数撮影されていたらしい(そもそも続編というより、前編・後編という構想だったようだ)。ところが制作サイドとドナーが衝突して降板、続編は早撮りの名人として知られるレスターの手に委ねられたという経緯があった。このあたりは公開当時から、噂として日本でもかなり知られていた話だったのだが、あれから四半世紀を経て、この作品では降板したドナーが本来の構想に基づき、残っているフィルムなども総動員して、それに近づけ再構成した作品ということなのだ。つまりこのヴァージョンは『監督が違う「スーパーマンII」』なのである。

 で、再構成された本編だが、基本的ストーリーは同一なものの、さすがに興味津々のシーンが連続する。例えば、予算の都合でカットされたとおぼしきマーロン・ブランドもココではきっちり登場するし(その分、スザンナ・ヨークのシーンがなかったりする)、クラーク・ケントとロイス・レーンのやりとかも多数追加(テスト映像まで活用している)、ストーリー的に結末へのもっていき方も違ったりするのだが、なにより原版とは雰囲気がかなり違うのに驚く。レスターはスラップスティック&ドタバタ調の演出でうまみを見せる監督なので、原版ではそういうムードが横溢していたが、ドナー版では、古き良きパラマウント調みたいなロマンティックさがかなり濃厚なのだ。これはまさに前編と共通するムードであって、その意味では確かに先行した「スーパーマン」の後編らしい仕上がりなったといえる。

 ただし、続編の素材を全て取り終わっていた訳ではないだろうし、その構想だって全部が煮詰まっていた訳でもないだろう。また、レスターの撮った分も多数使っていると思われるところから、本作はドナーが「本来の構想した後編に出来る限り近づけ」ただけで、前作の充実した完成度からすると、ちと薄手な感じは否めないし、ぎくしゃくしたところも感じてしまう。ストーリー的には結末を前作で先取りしてしまったので、ここではおなじやり方をもう一度使ってしまっているなど点などその最たるものだ。おもしろいことはおもしろいが、前編と比べるのは酷だしとしても、「スーパーマンII」のオリジナル版と比べても、こちらの方が優れた仕上がりと言い切れるかといえば、いろいろと考えさせる....というのが正直なところだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ハイドン 交響曲第31番『ホル... | トップ | エイリアン ディレクターズ・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

MOVIE」カテゴリの最新記事