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七人の侍(黒澤明 監督作品)

2009年08月19日 23時06分42秒 | MOVIE
 昨夜に続いて「椿三十郎」のサントラのことでも書こうかと思ったが、なんとなく勢いにのって(?)、今夜は「七人の侍」を観てしまった。こちらは4,5回目くらいだろうか。一般的に黒澤作品では、この「七人の侍」をもって最高傑作と推する声も多いのだが、個人的な感想だと、10年以上前、最初にこれを観た時は、それほどの傑作とも思わなかった、おもしろさという点では圧倒的に「用心棒」の方が上だし、スペクタクルな娯楽時代劇という点では「隠し砦の三悪人」の方が上出来などと思ったりした訳だけど、こちらもさすが折り紙付きの名作だけのことはある。回数を重ねるに従って、どんどんと「この映画のとてつもなくよく出来た」ところが感じるようになってきた。おそらく、あと2,3回観たら、「私が一番好きな黒澤作品」になってしまうかもしれない....そんな予感がするほどだ。

 「七人の侍」は一種の群像劇だから、主役というか、分かりやすい軸となるような登場人物はそれほど鮮明ではないし、今の感覚で娯楽映画と呼ぶには、ものものしい冒頭のクレジットからして、ちとリアルに暗過ぎだし、ドラマの展開には常に悲劇がつきまとっているところなどが、きっと私には違和感を覚えたのだろうと思う(ついでにいえば、画像、音声が鮮明でなく、台詞など何をいってるのかよくわからないところが随所にあったのも災いしていた)。ただ、回数をかさねていくと、まさにそういうところが、逆に味わい深いところだということがよく分かる。例えば、7人の侍のそれぞれのキャラクターなど実に良く描き分けられていて、観る度に「さまざまな人間」が見えてくるし、この侍たちにかかわる農民たちのドラマなども、崇高さと醜悪さがないまぜになった実に人間くささが観れば観るほどに味わい深かったりするのだ。

 ともあれ、このむき出しの人間臭いドラマを見て映画を観ていて、私が何度も感じたのは、我々が生きている今の日本はあまりに洗練され、人間が本来もっている生活感だとか、時にむき出しになる情念、醜悪さといったものが、あまりに隠蔽されすぎてしまったのでないか。我々はここ数十年の間にそうした生活に徐々に飼い慣らされてしまい、なかなか気がつかないが(気がつかないフリをしているというべきか)、実はココは心地よい牢獄なのではないか....という点だ。柄にもないが、なんだかこんな大仰なことを感じさせた映画というのもあまりない。

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