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ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ

2009年05月20日 23時52分16秒 | クラシック(一般)
コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を視聴して大ファンになってしまったヒラリー・ハーンの17歳のデビュー・アルバムがコレ。「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」からパルティータは2番と3番、ソナタが3番という3曲をピックアップして1枚のアルバムとして構成しているが、これはなかなかうまい構成だ。この全6曲に渡る無伴奏は最後の2曲....つまり3番のソナタとパルティータは長調で、残りが短調で構成されているのだが、そこから一番華やかで明るいパルティータの3番をアルバム・トップにもってきて、シャコンヌをフィーチャーした短調で重厚なパルティータ第2番を真ん中、そして最後は再び長調で軽快なソナタ第3番で締めくくると流れなのである。短調の曲が真ん中に来ることによって、アルバム全体がひとつの大きな3部構成の曲のようになっているのだ。

 「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は何度か聴いていくと思うのだが、この全6曲は全体を俯瞰しつつ聴くと、重厚でシリアスな最初の4曲(特に「シャコンヌ」をピークに)から、徐々に明るく、そして最後には晴れ晴れと終わるような、例えばマーラーの5番みたいな、つくり私が慣れ親しんだあまたのロマン派の音楽のような流れに勘ぐって聴けないこともないと思うのだが、ここではハーンは17歳のデビュー作ということで、華やいだムードを重視、かつ難曲の「シャコンヌ」をフィーチャーしつつ、選曲盤ということで、過去の大巨匠たちとの直接対決は避ける....みたいな細心の注意を払った感じがするのである。
 「曲順なんか替えたところで、なんだというのだ」「勘ぐり過ぎ」みたいに云う人もいらっしゃるだろうが、それでも多分このアルバムはそこまで考えて作られたのだろうと思う。ハーンが作ったこれまでのアルバムは、協奏曲などが特にそうだがカップリングなど知的センスが感じられるユニークなものが多いし、このアルバムでもそんなセンスが出たのだろうと思う(もっとも、彼女自身の選曲なのかどうかはわからないが....)。

 さて、演奏だが17歳で既に完璧な「ヒラリー・ハーンの世界」である。精密機械のような精度でディーテルまで克明に演奏しつつも、全体としては流れるようなフォルムを持った例の演奏ぶりである。例えば「シャコンヌ」などなんと17分もかけて演奏しているが、特に遅いとも、弛緩した印象を感じさせず、ある種アポロ的な美しさを感じさせるのは実に彼女らしいく、あまたの「シャコンヌ」に伍しても立派に自己主張した演奏だと思う。もっとも、そういう演奏なので、ロマン派的な情念だとか、重厚でシリアスな佇まいなどをこの曲に期待する向きには、ちとあっけらかんとして軽すぎる印象を受けるだろうなぁとは思う。ちなみに両端におかれた長調のソナタとパルティータはハーンらしさが全てが良い方向に作用した演奏でこれは文句なしだと思う。「ソナタ」の中に配置されたシャコンヌのように破格なほど長い訳ではないが、それでも十分に長大な「フーガ」など、完璧に弾ききっていて痛快、さすがだハーン!。

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