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マーラー 交響曲第5番/レヴァイン&フィラデルフィアO

2007年02月17日 19時58分13秒 | マーラー+新ウィーン
 先ほど届いたばかりのCDです。レヴァインのマーラーといえば、かの柴田南雄をして『レヴァインとテンシュテットはマーラー交響曲の演奏に関する従来の観念をすっかり変えてしまった。これは驚くべきことだ。交響曲の演奏史の上でも滅多にないイベントだと思う』といわしめたほどに高い評価と得た演奏だった訳ですが、私自身「どんな演奏なのだろう?」と気にはなっていたものの、BMGというレーベルのマイナー性が仇になったのか、次々に登場する話題性の高い演奏に目がくらんだのか、ともかく、これまで彼のマーラーをほとんど聴いたことがなくて、最近ではもうほとんど忘れたも同然になっていたのですが、1000円を切る廉価盤ということもあって、あれから四半世紀もたった今頃になってようやく聴くことができました。

 レヴァインの演奏の何が評価されたのかといえば、要するにマーラーの諸曲を「完全に古典化した交響曲」として割り切って演奏したということに尽きるんでしょう。なにしろ、70年代あまりまでのマーラーといえば、まだまだ海の物とも山の物ともつかないやたらと規模のでかい意味不明な交響曲というイメージが強く、それをワルターやバーンスタインが半ば啓蒙を兼ね、マーラーに殉じる十字軍のような気概で、必死に振っていたという構図でしたから、レヴァインのように若く、しかも独欧の伝統から完全に切り離された若い指揮者が、マーラーの音楽の持つ前衛性、同時代性のようなものを完全解決済みの問題として、マーラーを軽々と演奏したというのは、今になってみれば理解しがたいですが(なにしろ、現在では完全に古典化してしまいましたから)、やはり当時としては衝撃的なことだったんですね。もっとも、レヴァインという人の持つ、実にあっけらかんとした音楽的パーソナリティーというのも無視できない要素だとは思いますが。

 さて、実際に聴いてみた印象ですが、70年代にこれを聴いたら、そりゃ驚くよなぁ....というくらいにモダンな演奏で、現在聴いてもほとんど遜色ない、よく歌うけれど過渡に情緒的にはならない、前衛的な音響はおしなべて音楽的に処理.....という今風なマーラーとなっています。というか、これが「今風なマーラー演奏」の出発点なんでしょうが(笑)。とにかく徹頭徹尾、屈託のない乾いた明るさを持ったマーラーで、世紀末だとか表現主義だとかいう要素は薬にしたくともないといったところです。おまけにオケがフィラデルフィアですから、あのオーケストラ特有な原色系のオーケストラ・サウンドがその傾向を一層強めているという感じがします。なにしろこの時期のフィラデルフィアはまだまだオーマンディのご威光がたっぷり残っていたでしょうから、この演奏の持つちょっと金ぴかなブリリアントさ、ゴージャスさのようものは、ひょっとするとフィラデルフィアというよりは、オーマンディ・トーンだったのかもしれませんが。

 ちなみに音質ですが、楽器近接のマルチマイク・スタイルで録られた音のようですが、ややざらつくところはありますが、なかなかクリアな音質です。BMGの廉価盤はノイズリダクションをかけすぎて、とんでもなくぼやけた音になっていたものに過去であったことがあるので(小沢のストラヴィンスキーとか)、このアルバムも心配していましたが、どうやら新しいリマスターをしたらしく、鮮度感、音圧とも全く不足がありませんでした。こうなると他の曲の演奏も聴きたくなりますね。

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