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リスト ピアノソナタ ロ短調 /アファナシエフ

2010年04月20日 23時34分53秒 | クラシック(一般)
 このところ何種類か立て続けに聴いてきたリストのピアノ・ソナタなのだが、とりあえずこれが最後になる。結果的にこの演奏が真打ちになってしまったが、ある意味でこのくらいそれに相応しい演奏もないと思う。なぜなら、このアファナシエフの演奏は同曲をなんと41分もかけて演奏した異演との評判も高い演奏なのである。
 前にもそんなことを書いたが、同曲は通常で31,2分程度、早いものならアルゲリッチが25分半でやったりしているくらい代物だから、これを41分かけて演奏するという感覚はやはり尋常ではない(リピートとか版の問題でもなさそうだ)。

 で、おそるおそる聴いてみると、なるほど異様なほど遅い。ただ、遅いも遅いが、この人の場合、この人のピアノはリリース音がやけに短せいもあってか、休止部分が間がやけ長いのが特徴だ。ただでさえ遅い第2部など、もうほとんどこのまま止まってしまうのでは思うようなところすらあるほどだ。つまり、音と音の間に異様に隙間を感じさせる演奏になっていて、モチーフや流れがほとんどばらばらに解体されているといった印象である。その様はさながら超高解像度のCGで再構成された名画を観ているような、虫眼鏡で拡大するとドットが見えてくるような演奏といった感じがする。おかげで第3部など、この曲をパーツごとに解剖しているような趣きがあり、フーガの部分などまるでシェーンベルクみたいに聴こえたりする。

 更にいうと、この人のタッチはかなりごつごつしていて(フォルテの部分も異様な音がする)、決して滑らかでない奇妙なフレージングが散見し、先の「遅さ」も併せると、ある種マニエリスム的な解釈という感も強い。つまり、結果としてこうなったというよりは、この演奏は非常に意識的かつ人為的に解釈された産物のようなものを感じさせたりする訳だ。まるで音楽的な引力に逆らって、演奏者が忍耐の限界でまで遅くすることに挑戦し、その結果、期せずして生じる緊張感を狙った演奏という感もあるくらいだ。あまり頻繁聴こうとは思わないが、とにかくユニークな演奏である。

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