「真夏の夜の夢」といえば、もちろんシェークスピアのドタバタ劇ですけど、若き日のメンデルゾーンがこれ読み、いたく感激....したのかどうか知りませんが、ともかく仮想のオペラか劇音楽だかのための序曲として、作曲したのがこの「真夏の夜の夢」序曲という作品。メンデルスゾーンはモーツァルト並の神童だったらしく、この「真夏の夜の夢」も、天才としかいいようがないめくるめくような楽想の豊富さに加えて、少年期特有のファンスティックさが前期ロマン派的な色彩感と絶妙にマッチして、まさに「神童の音楽」としかいいようがない傑作になっています。で、これには後日談があって、それから17年後、つまりメンデルゾーン34歳の時に、プロシアの王様から「真夏の夜の夢」の劇音楽を作れという依頼がきて、それに答えて、作ったのが序曲を除いた劇音楽「真夏の夜の夢」という訳。
劇音楽「真夏の夜の夢」というのはフルに演奏すると声楽が入ることもあり、アルバムにせよ、演奏会にしても全曲演奏されることはあまりありませんけど、「序曲」、「スケルツォ」、「夜想曲」、「間奏曲」、「結婚行進曲」の5曲を抜粋した組曲については、アルバムなどもけっこうあるようで、私は組曲についてはジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団によるこのパターンでの演奏で知りました(全曲版はペーター・マークとスイス・ロマンド響の演奏で)。セルとクリーブランドの演奏はとにかく合奏の精度が高く、リズムがきっちり揃っている上に、フレージングはべったりせずクリーンそのものな感じで、そのあたりが作品とセルと合っていたんでしょう。その後、CD時代に入って聴くことになるプレヴィンとウィーン・フィルの演奏など、セルの演奏を聴いてしまうと、リズムが切れがあまりに鈍重で、改めてセルの演奏の偉大さを痛感したのです。とにかく、なにげに聴いていたこの演奏は、実は大傑作だったんですね。
そんな訳なので、この演奏のSACDは発売された時はすかさず購入しました。この演奏はセル晩年の67年の収録ですから元々音は悪くなく、従来出ていたCDでも充分に良い音でしたが、SACDは新たなマスタリングがされたようで、ホールトーンが良く聴こえ、各楽器の存在感も明瞭、低音もかなりゆったりとして、より生音に近い、スケールの大きな音に変身しています。こうした理想的な音で聴く「真夏の夜の夢」は最高です。
「スケルツォ」では、ちょこまかした妖精の踊りみたいなムードを弦と木管が実にクリアなトーンで表現していますし、「夜想曲」ではホルンの響きかなんともロマンチックな曲ですが、このあたりも決して鈍重にならずすっきりと演奏させている当たりセルの真骨頂でしょう。「間奏曲」はちょっとメランコリックなムードが印象的ですが、ここでも弦のフレージングが実にクリアで清潔、まさにメンデルゾーンにぴったりなんですね。まさに「真夏の夜」にひんやり聴くにはぴったり。かの有名な「結婚行進曲」もこの曲特有の賑々しさはぐっと控えめにして、かけぬけるようにさらりと演奏しているのも、彼らしいところでしょうね。
ともあれ、私にとっては「真夏の夜の夢」組曲といったらこの演奏にとどめをさします。あっ、あと全曲でいったら、前述のとおりペーター・マークとスイス・ロマンド響の演奏ですかね。あまり有名ではないかもしれませんが、この曲のファンスティックさに焦点あてたとても良い演奏だったことを思います。これ、自宅にはもうアナログ盤がないのですが、CD化されてるんでしょうかね?。あぁ、なんか急に聴きたくなってきたなぁ。
劇音楽「真夏の夜の夢」というのはフルに演奏すると声楽が入ることもあり、アルバムにせよ、演奏会にしても全曲演奏されることはあまりありませんけど、「序曲」、「スケルツォ」、「夜想曲」、「間奏曲」、「結婚行進曲」の5曲を抜粋した組曲については、アルバムなどもけっこうあるようで、私は組曲についてはジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団によるこのパターンでの演奏で知りました(全曲版はペーター・マークとスイス・ロマンド響の演奏で)。セルとクリーブランドの演奏はとにかく合奏の精度が高く、リズムがきっちり揃っている上に、フレージングはべったりせずクリーンそのものな感じで、そのあたりが作品とセルと合っていたんでしょう。その後、CD時代に入って聴くことになるプレヴィンとウィーン・フィルの演奏など、セルの演奏を聴いてしまうと、リズムが切れがあまりに鈍重で、改めてセルの演奏の偉大さを痛感したのです。とにかく、なにげに聴いていたこの演奏は、実は大傑作だったんですね。
そんな訳なので、この演奏のSACDは発売された時はすかさず購入しました。この演奏はセル晩年の67年の収録ですから元々音は悪くなく、従来出ていたCDでも充分に良い音でしたが、SACDは新たなマスタリングがされたようで、ホールトーンが良く聴こえ、各楽器の存在感も明瞭、低音もかなりゆったりとして、より生音に近い、スケールの大きな音に変身しています。こうした理想的な音で聴く「真夏の夜の夢」は最高です。
「スケルツォ」では、ちょこまかした妖精の踊りみたいなムードを弦と木管が実にクリアなトーンで表現していますし、「夜想曲」ではホルンの響きかなんともロマンチックな曲ですが、このあたりも決して鈍重にならずすっきりと演奏させている当たりセルの真骨頂でしょう。「間奏曲」はちょっとメランコリックなムードが印象的ですが、ここでも弦のフレージングが実にクリアで清潔、まさにメンデルゾーンにぴったりなんですね。まさに「真夏の夜」にひんやり聴くにはぴったり。かの有名な「結婚行進曲」もこの曲特有の賑々しさはぐっと控えめにして、かけぬけるようにさらりと演奏しているのも、彼らしいところでしょうね。
ともあれ、私にとっては「真夏の夜の夢」組曲といったらこの演奏にとどめをさします。あっ、あと全曲でいったら、前述のとおりペーター・マークとスイス・ロマンド響の演奏ですかね。あまり有名ではないかもしれませんが、この曲のファンスティックさに焦点あてたとても良い演奏だったことを思います。これ、自宅にはもうアナログ盤がないのですが、CD化されてるんでしょうかね?。あぁ、なんか急に聴きたくなってきたなぁ。
17歳で作曲した序曲Op.21も素敵ですが、34歳のときにその序曲をも引用して構成したOp.61の劇音楽は、神業としか言えないでしょう。
全曲を通して聴いても、まったく違和感がありませんから。
ストラヴィンスキーやブルックナー以上に改訂魔だったメンデルゾーンが、この曲に改訂の手を加えなかったのは幸いでした。
それにしても、全曲版が少なすぎますね。
38歳で亡くなったメンデルゾーン。
もっと長生きしていたら音楽史が換わっていたかもしれませんね。