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コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲/ツウ,ロン&ラズモフスキー・シンフォニア

2009年03月03日 23時39分33秒 | マーラー+新ウィーン
 ここでもう何度も書いているが、コルンゴルトの幼少時の神童振りは有名だ。10歳前後の頃にマーラーやツェムリンスキーを驚嘆させ、リヒャルト・シュトラウスもかくやという絢爛たる「シンフォニエッタ」を完成させたのが15歳、10代後半にはいくつもオペラを作曲し、なんなく人気作曲家の仲間入りをしたというから凄い。ついでに20代にはウィーン音楽大学名誉教授の称号をもらったり、楽壇ではシェーンベルクと並び称されるされるなど、要するに普通の作曲家なら優に60年はかかるであろう音楽的業績を二十数年で駆けめぐってしまったという感じだろうか。ひとつの文化の爛熟期にありがちな才能といってしまえばそれまでだろうが、やはり凄いことは違いない。
 しかし、「モーツァルトの再来」とまで呼ばれた、このユダヤの神童の順風満帆な人生はやがて翳りが見えてくる。いうまでもなくナチスの登場である。コルンゴルトはユダヤ人だったため、活動は思うにまかせず、結局、30代以降はアメリカに渡り、生活の糧として映画音楽をつくる羽目になる。ところが、さすがは大物コルンゴールドというべきか、彼はありきたりの映画音楽に身を堕とすことなく、オペラさながらのスコアを何本も書き、この分野でもパイオニアとして名を残すことになる。例えばジョン・ウィリアムスの「スター・ウォーズ」など聴けば、コルンゴルトの影響は明らかである。

 さて、この作品はそのコルンゴルトが戦後(1947年)につくった非映画音楽、つまりクラシック作品である。先日来、私はショスタコのヴァイオリン協奏曲でもって、ヴァイオリン・ソロに目覚めてしまったせいで(いや、未だ抵抗がなくなった程度かも-笑)、何か他の曲も聴いてみたくなったが、今更メン・チャイやベートーベン、シベリウスでもないだろうと思い、気まぐれでこの曲も聴いてみたという訳である。Naxos盤とはいえ、自宅にアルバムが一枚だけでもあったのは幸運だったという他ないが、一聴して文句なく魅了された。「なんでオレはこの曲の良さがこれまで分からなかったんだ」という感じである。
 この曲は彼がそれまで映画音楽で使った主題だのモチーフだのいくつも使われているのが特徴だ。第一楽章は「Another Dawn」、第二楽章は「Anthony Adverse」、第三楽章では「The Prince and the Pauper」という具合だが、ほんの少し引用するとかいう次元ではなく、主要主題としてほとんどそのまま登場するのが、彼の映画音楽を詳しい人なら、けっこう驚くところではないか。もっともコルンゴルト・ファンを自称する私でも、実はあまりそのあたりを煎じ詰めて聴いてはいなかったので(そもそも1,2度くらいしか聴いてなかったとも思うが)、改めてこの曲の成り立ちの特異性に驚いたという感じなのだが....。

 ともあれ、この曲は第一楽章の「Another Dawn」から転用された、伸びやかな壮麗さとウィーン世紀末特有のむせかえるほど充満したロマンティックなムードが合わさったテーマからして、心揺さぶられる。「Another Dawn」の音楽はもう何度も聴いているはずだが、映画という枠から解放された同曲のテーマが、さほどデフォルメされている訳でもないのに、これほどクラシカルな趣が持つとはやはり驚きだ。第二楽章では、とろけてしまいそうなくらい甘美で感傷的が旋律をヴァイオリンがリリカルに歌い、思わずうっとりというか、しばし陶然とする。第三楽章のテーマは「The Prince and the Pauper」からのものだが、こちらはもともとジョン・ウィリアムスの祖先のようなダイナミックな音楽だったので、最終楽章らしくその線でぐいぐい進む。ヴァイオリンもかなりテクニカルな動きで縦横無尽に活躍して楽しい。
 という訳で、「ショスタコの次はこれだぁ」という感じで気に入ってしまったのだが、カタログを探してみると、比較的若目の人がもっぱら手がけているようであり、これもまた今まさに古典化が進んでいる作品なのかもしれない。ちなみにこのアルバムでの演奏は、ソリスト、指揮、オケ共に全く馴染みのない面々によるものだが、あまりごてごてとせずプレーンな感じで品良くまとめた演奏(なんだろうと思う)、この曲を知るにはもってこいである。

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