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コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲/ムター,プレヴィン&LSO

2009年03月06日 23時43分52秒 | マーラー+新ウィーン
 3日に職場近くのショップで購入してきたもの。ムターが当時結婚したばかりだったプレヴィンを指揮に迎え、ロンドン響他をバックに収録したもので、一緒に収録されているのはチャイコフスキーの協奏曲である....というか、当然チャイコの方がメイン・ディッシュなんだろうけど、私といえば、もちろんコルンゴールドの方がお目当てである。先日来聴いているヴェラ・ツウという中国系(?)のおそらく女流が弾いた演奏は、無名とはいえ、やや細身だが、繊細で流れるようなフレーズと気品のあるムードのヴァイオリンがなかなかよくて、この曲はこれで十分みたいな気もしていたのだが、ムターとプレヴィン、そしてロンドン響、レーベルはDGという、当代一流の組み合わせともなれば、前述のアルバムより当然素晴らしい演奏が期待できそうだ....という狙いである。

 さて、演奏の方だが、先のアルバムのそれとはやはりかなり違う趣だ。ムターの演奏はカラヤンの秘蔵っ子としてデビューしたての頃にブラームスを1,2枚聴いた程度だが、さすがにこの四半世紀でDGの看板スターに成長しただけのことはある。恰幅が良く、振幅が大きく、重量感をも感じさせる、入念なフレージングは、マエストロ的なオーラを感じさせるに十分であり(ちなみにこの人、私より4歳下で、これを録音した時は40歳くらいだったはずなんだけど、なんだかやけ美人になってませんか?)、なにやらブラームスかベートーベンのソナタでも聴いているような、一点一画を揺るがせにしない、ある意味シリアスな趣すら漂わせている。故に非常に格調高い、ドイツ正統派らしいクウォリティの高い演奏といってもいいと思うのだが、この曲が持つ「映画音楽の主題を使った往年のウィーンの巨匠のノスタルジックな作品」という特徴を踏まえると、聴く人によっては賛否両論かもしれない。

 なので、この曲の持つ映画音楽的な甘美さだとか、感傷的なムードみたいなものを期待して聴くと、ちょっと違うかなという気もする。ただ、この曲をドイツ・ロマン派の最終ステージに位置する作品として、きちんと評価を定めるためにはこういう硬派な演奏が現れてこそ、古典化するのではないという気もするし、お世辞ではなく実際に聴いていて、その演奏の説得力は抜群である。ヴェラ・ツウの楚々とした淡麗な演奏も悪くないが、ムターの「そもそも協奏曲とはなんぞや」みたいな演奏の方が、むしろこの曲に相応しい佇まいなのではないかとも思う。ついでに書けば、バックはプレヴィンとLSOであり、この点では文句なし、ハリウッドもウィーンも知り尽くしたプレヴィンなればこその素晴らしくスケール感とパースペクティブは文句なしの音楽的感興がある。

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