「酔いどれ天使」の前作にあたる1947年の作品。これも敗戦直後の風俗が舞台になっている-当時の-現代劇という点では、「酔いどれ天使」「野良犬」「醜聞」といった一連の作品と同じだが、これまた趣は全く異なる。ストーリーらしきものはほとんどなく、貧乏な生活をかこっているカップルが、唯一会える日曜日のデートを様々なエピソードを通じて綴っているものだ。カップルの持っているお金は35円、今でいったら2000円くらいだろうか、貧乏故に気持ちも暗くなりがちな男(沼崎勲)と健気な明るさで男を励ます女(中北千枝子)が、貧乏であるが故に様々な苦境に遭遇しつつも、ふたりして希望を取り戻す夜を迎えるというものだ。
劇中では、後年のニッセイのおばちゃん中北千枝子がとてもチャーミングだ。後年のイメージとは大分違って、この頃はずいぶんとふっくらとしているが、あの独特のメリハリのある口調はこの時期からのもので(同一人物なんだから当たり前か)、屈託のない明るさと誠実な人柄を感じさせる役柄を爽やかに好演していた。あんまり美人でもないが、それがかえってリアルだったりもする。こういうキャラクターである故に、アパートやラストの泣き崩れたり、観客に向かって涙ながら訴えるシーンの切実さが生きてくる訳だ。とにかくとても魅力的で、この映画のかなり部分を彼女のチャーミングさが支えていると思った(アパートのシーンなど如実に表れる貞操観念などが特にそうだが、我々が既に忘れかけている「慎ましい日本女性らしさ」のなんとも魅力的なことか、それに比べ男は今も昔も意外と情けない-笑)。
あと、随所に登場する敗戦直後の風景も既視感を誘うような懐かしさがあっていい。上野や有楽町、あと日比谷とおぼしき街をこの若いカップルが闊歩したり、雨の中を駆け抜けていくシーンなどとても印象的だ。あと有名な最後のシーンだが、今の視点から見ると、あの「都会のファンタジー」は、自分にはいささか直球過ぎた感がなくもないが、中北千枝子の名演技もあって、やはり印象深いものがあるのは確かだ、おそらく一度みてネタを知ってしまえば、次はかなり楽しめるのではないか?(数分間にまとめた「未完成」のアダプテイションもいい)。
という訳で、演出などまだまだ戦前臭さというか、ひなびたところがないではないが、全体としては「愛すべき小品」といったところで、観終わった後、なんだかとても爽やかな気分にさせてくれた映画である。
劇中では、後年のニッセイのおばちゃん中北千枝子がとてもチャーミングだ。後年のイメージとは大分違って、この頃はずいぶんとふっくらとしているが、あの独特のメリハリのある口調はこの時期からのもので(同一人物なんだから当たり前か)、屈託のない明るさと誠実な人柄を感じさせる役柄を爽やかに好演していた。あんまり美人でもないが、それがかえってリアルだったりもする。こういうキャラクターである故に、アパートやラストの泣き崩れたり、観客に向かって涙ながら訴えるシーンの切実さが生きてくる訳だ。とにかくとても魅力的で、この映画のかなり部分を彼女のチャーミングさが支えていると思った(アパートのシーンなど如実に表れる貞操観念などが特にそうだが、我々が既に忘れかけている「慎ましい日本女性らしさ」のなんとも魅力的なことか、それに比べ男は今も昔も意外と情けない-笑)。
あと、随所に登場する敗戦直後の風景も既視感を誘うような懐かしさがあっていい。上野や有楽町、あと日比谷とおぼしき街をこの若いカップルが闊歩したり、雨の中を駆け抜けていくシーンなどとても印象的だ。あと有名な最後のシーンだが、今の視点から見ると、あの「都会のファンタジー」は、自分にはいささか直球過ぎた感がなくもないが、中北千枝子の名演技もあって、やはり印象深いものがあるのは確かだ、おそらく一度みてネタを知ってしまえば、次はかなり楽しめるのではないか?(数分間にまとめた「未完成」のアダプテイションもいい)。
という訳で、演出などまだまだ戦前臭さというか、ひなびたところがないではないが、全体としては「愛すべき小品」といったところで、観終わった後、なんだかとても爽やかな気分にさせてくれた映画である。
私は若いころ、オールナイト上映の満員の映画館で鑑賞したのですが、日比谷野音?のシーンは拍手するべきかどうか凄く迷って、緊張してしまったのを覚えています。
結局、誰も拍手しなかったので、黙って見ていたのですけどね。
中北千枝子のポジティブな明るさはとても可愛かったですね。酔いどれ天使の久我さんに負けてない。
そういえば、確か「対位法」とか呼んでいた音楽の使い方を、初めて試したのがこの映画だったかな。アパートに一人残された男のシーンで、バックには商店街の明るい音楽が流れていたと思うのだけど。
黒澤さんの映画でこういったかわいらしい作品ってこれだけですねぇ。
それから、この作品、一種の音楽映画ですよね。「未完成」だけじゃなく、「楽興の時」「カルメン」とかいろんな音楽が出てきて楽しかったです。あと、例のアパートの場面で電機屋から聞こえてくるタンゴ、あれなんて曲だったのだろう?
> この映画など、全く知りませんでした。
私もこの作品は全く眼中になかったのですが、まさにココでのコメントで推薦いただきまして、どうかな?と思いつつも観はじめたところ、とても楽しく観ることができました。それにしても思うのは、戦中の作品(「一番美しく」にど)とは全く雰囲気が違うことで、やはり日本のムードが終戦でがらりと変わってしまったことを感じます。
> この演奏を担当したオケはどのオケだったのでしょう?
アレンジして演奏してましたから、やはり東宝のハウスオケじゃないですかね。まぁ、当時の状況からして、オケで演奏できそうな人はなんでも集めてきたんでしょうが、その中には戦前に鳴らしたけっこうな腕利きも居たということでしょうか?。