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HERRMANN / Obsession (愛のメモリー)

2008年11月10日 23時55分57秒 | サウンドトラック
 60年代中盤、ヒッチコックとの痛恨の決別の後、しばらく英国で指揮や作曲活動をしていたハーマンだが、それから約10年後最晩年の日々を再びサウンド・トラックに力を傾注することになる。彼が最晩年に残した作品はどれも傑作だが、私が好きな作品は一般的に知名度も評価も高い「タクシー・ドライバー」ももちろん素晴らしいが、それ以上に愛着を感じるのがこの「愛のメモリー」である。この作品は自他共に認めるヒッチコックの後継者ブライアン・デパルマが、「キャリー」でブレイクする直前に撮った作品で、妻娘を誘拐され、死なせてしまった主人公が、十数年後、旅行先のイタリアに死んだ妻と瓜二つの女性と出会う....ストーリーからして、もろにヒッチコックの「めまい」を思わせる作品なのだが、なにしろそこに「めまい」の音楽を作った本家ハーマンをつれてきたのだから、音楽的には悪くなりようがないともいえる作品であった。

 愛している人を失い、やがてそれに瓜二つの女性に遭遇したことで、失った巨大な欠落感を埋めようとする....ストーリーは、現実的にはなかなかないだろうが(笑)、ハーマンの場合、そうしたやや不安定な精神状態をロマン派最終ステージの音楽のように表現して、ちょっとありえない物語の推移にある種のリアリティを与えることに成功している。壮絶さや緊張感といった点では「めまい」に一歩譲るが、全編を通じてその幻想的なムードは忘れがたい印象を残す。
 なので、この作品の場合、音楽的ポイントは、主人公の愛していた女性(この場合妻)の幻影が、まるで幻のように現れては消える主人公の心情を、それこそシレーヌのようなコーラスを伴った独特なテーマでもって表現して、それが度々劇中に現れることによって、映画全体にある種幻想的な雰囲気を与えているところにあるのだろう。逆にいえば、その分「めまい」ほど痛切な情感はなく、ある種達観したような雰囲気になっているともいえるが、このあたりはやはりハーマンの晩年ということも関係あるだろう。

 また、前半に現れる「ワルツ」も傑作、これはハーマンが作った名旋律のひとつだろうと思う。流れるように優美で、しかもその怒る悲劇をも予感させる雰囲気もおりまぜて、ワーグナーよろしく半音階で上り詰めて行く様はまさに陶酔的であるし、そのままつながる誘拐のシーンでの音楽はまさに「めまい」的なスリリングさがある動のハーマンを感じさせる仕上がりで、これまた素晴らしい。
 ちなみにこの作品、映画的にみると実は大したことない。私は大昔TVで見たきりだが、ストーリーがいくらなんでも....的に無理があったことがやはり大きい。ただ「千日のアン」ですっかりファンになったジュヌヴィエーヴ・ビジョルドが美しかったことと、ラストのぐるぐる回るシーンのデパルマらしいシーンだけはよく覚えている。

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