Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

シューマン 交響曲第1番「春」/ムーティ&ニュー・フィルハーモニアO

2007年07月09日 22時21分24秒 | クラシック(一般)
 本日、出張帰りにショップで購入してきたアルバムである。私がムーティのアルバムで最初に聴いたのは、確かフィラデルフィアとの「ローマ三部作」だったと思うけど、このアルバムは更に遡って、彼がデビューしたての頃、つまり70年代終盤の頃に作った全集である。このアルバムが当時どういう評価を得ていたのか、私は全く覚えていないけれど、おそらくフィラデルフィアの常任就任への伏線としての、昇り調子だったフィルハーモニア時代ということもあり、きっと高い評価を得ていたに違いない。デビュー直後のムーティは、その直線的でフレッシュな勢いと豊麗な歌い回しでもって、トスカニーニの再来みたいな評価を得ていたはずだけれど、このアルバムもまさにそういう演奏になっている。もっとも、未だ1番を聴いただけだが....。

 という訳で、この1番はとてもフレッシュな演奏である。テンポは全体に早く、若さ故の勢いのようなものが全編にみなぎっているという印象である。第1楽章の序奏部もぐすぐすせず第1主題に向けて一気に走り抜けるという感じだし、主題が登場してからも一瀉千里とばかりに進んでいく。前回も書いたとおり、シューマンの交響曲はある意味渋く、響きがモヤモヤしているので、こんな風にいささか強引にベートーベン寄りな直線的流れを演出してしまうは、音楽的に正解かどうかという点ではいろいろな意見はあるだろうけれど、ひとつのやり方ではあると思う。ともあれ、その若武者然として颯爽としている演奏は、いかにもこの時期のムーティらしいところだと思う。第2楽章はややその直線性が裏目に出て、この楽章のコクというかロマン性のようなものがちと後退しているように思わないでもないが、旋律は十分に歌っているし、弦を主体としたサウンドの美しさもあり、とりあえず不満はない。

 第3楽章は遅目のテンポでかなりじっくりと演奏している。いや、本当はそれほど遅くはないのかもしれないが、かなり入念にスケルツォを歌い込んでいるため、そう聴こえるのかもしれない。一方トリオはかなりくっきりとスケルツォとは対照させていて、全体にかなりメリハリがある演奏になっていると思う。最終楽章は前回のラハバリとBRTフィルの演奏ではブラームス的なものを感じたが、ムーティーの演奏ではやはりベートーベン的な覇気を感じさせる。また、金管などもかなりテンションが高く、盛大に鳴り響いており、時にブルックナーあたりを思わせるものすら感じさせたりもする。要するにシューマンの交響曲というのは、そういう風にも解釈しうるヴァーサタイルさがあるというか、いろいろな意味で過渡期の作品だったんだろうと思ったりもした....。

....などと、こんな風に演奏を聴き比べをしていくと、やがて次から次へ演奏を買い込んではめになる。事実、これと一緒にインバルの全集も買い込んできたし、ネットでいくつかの演奏も既に注文済だ。これって危険信号か、まぁ、シューマンの交響曲を今度こそ好きになれそうだから、良しとするか(笑)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

潘越雲(パン・ユエユン)/情字這條路

2007年07月09日 00時52分28秒 | 台湾のあれこれ
 パン・ユエユンは台湾ポップスのパイオニアです。私は台湾ポップスの情報を体系的にもっている人ではないので、ひっょとすると間違いがあるかもしれませんが、パン・ユエユン、特にこの作品はその後台湾のミュージックに面々とつながる、ウェストコーストAOR、日本のニューミュージックあたりのモダさシンクロした、大陸的な大らかさを感じさせるサウンド、情緒連綿たる旋律、既視感を誘うような懐かしいムードなどなどをミックスした、いわゆる台湾ポップスの走りということになるようです。また、このアルバムはそれまでの暗黙了解だった演歌は台湾語、ポップス系は北京語というパターンを破って、台湾語で歌ったポップスということでも、台湾の音楽シーンではマイルストーンであったようです。まぁ、今聴くとまだまだ十分に演歌の残滓を感じさせる音楽ではありますが、おそらく88年当時としては、かなり斬新なものであったんでしょう。

 さて、このアルバム、とにかくパン・ユエユンの深いヴァィブレーションを感じさせる歌声に魅了されます。彼女の声は音域はクラシックでいったらアルト系で、女性としてはやや低目のものですが、角張ってはいないものの、芯の強さを感じさせ、情念的でも叫ぶ訳ではないが十分に情感を感じさせるという、とてもシックで気品のあるものです。曲はどれも懐かしさを誘うよい、人なつっこい心の琴線に触れてくるようなもので、どれも秀逸という他はありません。プロデュースはその後ロック・レーベルで数々のスターをバック・アップすることになるジョナサン・リーで、彼の初期のお仕事としても貴重な記録でしょう。後半はかなり日本のニューミュージック的なアレンジに接近した音楽になるのは彼のセンスなんでしょうね。好きな曲は、なんといっても、外国人が喜びそうな中華風味をモダンかつエキゾチックに展開した5曲目、聴いていて陶酔しちゃいます。まぁ、このアルバムはどの曲もなかなかですが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする