さざ波や 志賀の都は荒れにしを 昔ながらの山桜かな
これは平清盛の弟、平忠度（ただのり）の作とされている有名な和歌であります、この和歌にありますように我がさざ波の湖都は古都でもありました、かつてほんのいっときではありますが天地天皇がこの地に臨時首都のようなものを設けていたことがあるとされているからです
いまから何年も前、建設業を営んでいたことがある人物が湖都の市長であった時代に、このワンマン市長さん、湖都は古都でもあるのだから、古都であることをカンバンにして観光客を誘致して市の財政の健全化を図ろうと思いつきました
この古都が設けられていたのは主に「西大津」と称されている地域であり、この地域には「西大津駅」というJRの駅がありました、このため、この市長さん、「そうや、この駅の名前を変えて、《大津京》駅にしたらええのや、そうしたら名前に釣られて観光客がわんさか来るやろ、これこそ地域の活性化や、地方創生や、そしたら税収が伸びてワッハッハや、駅の名前変えるぐらいは簡単や、なにしろ,JRは今や金儲けに奔走する私企業やから、カネさえ払ったらなんでもしてくれる」と安易なことを思いついたのでありました
ところが湖国で暮らす若い日本古代史の研究者が噛みつきました
「志賀の都は《大津宮》（おおつの宮）、あるいは《近江大津宮》（おうみおおつの宮）などと呼ばれたことはあっても《大津京》と呼ばれたことはない、だいたい《京》というのは平安京や平城京のような碁盤の目の市街地を有する都を指すのであって、志賀の都は《京》に該当する都市構造を有していなかった、したがって志賀の都を《京》と称するのは歴史の歪曲である、学校の教科書にも志賀の都が《京》と記されている例はない、子どもたちを騙してはいけない」
これで「大津京」問題大論争に火がついたのでありました、発端はこの若き古代史の学者がGGIの知人に「金儲けのために歴史を歪曲することは許せん、この問題について市民に直接訴える場をぜひとも設けてほしい」と頼んだことでありました
日本の古代史なんかに何の興味も教養もないGGIでありましたが、若き学者から要請を受けた知人と相談して、こんな問題に市民が果たして関心を示すであろうかと疑問を抱きつつ、集会のようなものを行ったのであります
そうしましたら、結構人が集まり、その中には考古学の学者などもいて、おおいに盛り上がり、それを某全国紙が文化欄で大きくとりあげました、いろいろな学者や市民による意見が続出、ついには参加者が数百人というシンポジウムまで開催、某全国紙は何人もの歴史学者の意見を連載いたしました
この「大津京騒動」、一見文化問題のように思われましたが、何事にも光と影があるのが世の常であり、裏では「大津京」の名称を付してマンションを売り出せば、高く売れるにちがいないと目論んだ不動産屋さんなどが暗躍しているという話があったり、「大津京」を題材にした絵を売り込もうという絵描きさんがいたり、まあ、その他いろいろあったのでありますが、結局のところ、ワンマン市長が強引に押し切り、たいまい6千万円ばかりの公金をあこぎなJR西日本に支払って「西大津駅」を「大津京駅」に変えてしまったのであります
GGIらは「歴史を歪曲するために多額の公金をJR西日本に支払ったのは違法」として監査請求を行ったのでありますが、あえなく敗北・・・
まことに無念でありますので、駅名が変わった後も、GGIは誰かが「大津京駅」などと申しますと、「それ、どこの駅や、そんな駅はないぞ、言うなら西大津駅と言え！」と鋭く指摘することにしております
それから何年もの月日が流れてしまったのでありますが、先日、この駅の広場を横切って歩いておりましたら、一枚の看板に遭遇しました、何やら注意書きのようであります
今夜の写真はその看板を撮ったものです、よろしければクリックしてご覧くださいませ
ご覧になればお分かりのように、この看板には「大津京」ではなく「西大津」と明記されております、おそらく駅名を変えたときにこの看板を書き換えるのを忘れたのでありませう、まことにワッハッハであります
もちろん駅名は現在は「大津京駅」でありますが、「大津京」は駅周辺の地域の名称としては定着しておらず、地域を指す名称はあいかわらず「西大津」であります
そして、GGIの邪推ではない適切なる推測によりますと、「西大津駅」を「大津京駅」に改称した後、この駅で乗り降りする観光客が増えた気配はまったくありませぬ、駅名改称で潤ったのは 湖都である大津市のお店や宿泊施設などではなく,JR西日本でありあます
まことに愚かなる地方政治、地方創生の話で失礼いたしました
グッドナイト・グッドラック！
