透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「古寺巡礼」を読む

2013-10-27 | A 読書日記

**このような偉大な芸術の作家が日本人であったかどうかは記録されてはいない。しかし唐の融合文化のうちに生まれた人も、養われた人も、黄海を越えてわが風光明媚な内海にはいって来た時に、何らかの心情の変移するのを感じないであろうか。漠々たる黄土の大陸と十六の少女のように可憐な大和の山水と、その相違は何らかの気分の転換を惹起しないであろうか。**(62頁)

再読中の『古寺巡礼』にこのようなくだりがある。これは著者、和辻哲郎の聖林寺十一面観音を観ての洞察。

続けて和辻は**たとえば顔面の表情が、大陸らしいボーッとしたところを失って、こまやかに、幾分鋭くなっているごときは、その証拠と見るわけに行かないだろうか。**(62頁)と書く。

以前、ブログに次のように書いた。(過去ログ

**和辻哲郎は直観力に優れた人だったと思う。『風土』そして『古寺巡礼』を読んでそう思った。和辻は文化的事象を観察することでその背景にある抽象的で曖昧模糊とした風土を読み取った。それは論理的な思考ではなく、直観力によってのみ可能だったと思う。**

和辻は「直感的洞察力に優れた人」だったと改めて思う。 もっとも風土と芸術などの文化的な営みとの関係を明快な理路で結ぶなどということなど無理なこと。であればやはり直感ということになるのだろうが・・・。鋭い直観力には深い知識がベースにあることは言うまでもない。

本書に掲載されている寺院や仏像など24カットの写真は入江泰吉の撮影、さすがにどれもすばらしい。

増える一方の本、いずれかなり処分して1,000冊くらいにしたい。だが、このような名著は最後まで残しておきたい。


 


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