透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

まちの総体としての魅力は何によって決まるのか

2009-11-21 | A あれこれ

■ マップラバーとマップヘイター、分子生物学者の福岡伸一さんが「建築雑誌」の今年の9月号に寄稿したコラムによると世の中の人間はこのふたつに分類できるということだ。

マップラバー、すなわち地図好きとは俯瞰的な全体像を把握したからでないと行動を始めないタイプ。これに対してマップへイター、すなわち地図嫌いは自分の行きたいところに行くのに地図を頼りにしない、「通り」の様子を頼りに目的地に到達できるタイプ。

数稿前にまち(町という漢字表記よりひらがなの方がいい)の魅力は一体何によって決まるのだろう、と書いた。郡上八幡と松本はまちの基本的な構成要素が似ていて、個々の要素は松本の方が魅力的ではないかと思うのだが、まちの総体としての魅力はどうも郡上八幡の方が勝っている、というのが私の印象。

どうもマップラバーとマップへイターがまちの魅力を考えるキーワードになりそうな気がする。私はマップへイターをストリートラバーと言いかえたい。福岡さんはこのふたつのタイプに人間は分かれると書いているが、私は人間は実はどちらも好むのではないか、と思う。

で、まちの魅力とはこのふたつの、欲求といったらいいのか、を満足できるかどうかに大いに関係していると思う。すなわち、俯瞰的にまちの全体像が把握できる場所があること、街並み(この場合はひらがなではなくて街がいい)が魅力的なこと。

郡上八幡は小高い丘の上の天守閣からまちを一望できるし、松本は城山と呼ばれるやはり小高い丘から市街地を一望できる。白川郷も函館も神戸も・・・。

樋口忠彦は名著『日本の景観』でまちの全体像が把握できる小高い場所があることを魅力的なまちに欠かせない条件として挙げていたように思う。



まちの全体像が把握しやすいかどうかはまちの大きさに関係している。ケビン・リンチは『都市のイメージ』で都市の構造が分かりやすいことを魅力的な都市の条件に挙げてはいなかったか。 この点、松本より郡上八幡の方がかなり小規模で全体像が把握しやすい。

街並みはというと、郡上八幡にも松本にも古い街並みが残っているが、どうも郡上八幡の方が、風情というか情緒があるような気がする。情緒などという曖昧なことばを持ち出したくないが、他に適当なことばが見つからない。

まちなかに川が流れているとまち全体の骨格が分かりやすいが、松本にも郡上八幡にも川が流れている。

先日郡上八幡を初めて訪れた際の「松本より魅力的なまちだな~」という印象。それがなぜなのか、少し分かってきたような気がする。

まちの全体像が把握しやすい「俯瞰場」があること。そしてまちが小規模なこと。まち全体の構造が理解しやすい川があること(やはり道路などより川)。街並みに情緒があって魅力的なこと。これらがポイントではないか・・・。

実例に当て嵌めてこの考えの妥当性を帰納するには、実際に訪ねたまちがあまりにも少ない。弘前、角館、萩、岩国、長崎、・・・・、出かけてみたいまちはいくつもある。これからか・・・。


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