透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「美雪晴れ」 高田 郁

2017-03-18 | A 読書日記

みをつくし料理帖シリーズ全10巻 高田 郁/ハルキ文庫
「八朔の雪」
「花散らしの雨」
「想い雲」
「今朝の春」
「小夜しぐれ」
「心星ひとつ」
「夏天の虹」
「残月」
「美雪晴れ」
「天の梯」



■ みをつくし料理帖シリーズ全10巻の第9巻『美雪晴れ』を読み終えた。これで最終第10巻を残すのみとなった。

「食は、人の天なり」

いままで各巻を読み終えた後、自分の言葉で綴ることなく、大半を引用で済ませてきた。本巻のメインとなる場面のひとつはここだろう(215頁)。

**「俺ぁ、お澪坊を嫁に出す覚悟はしていたが、よもやご寮さんが先とはなぁ。そのせいか、今日の幸せは一層、身に沁みるぜ」**と種市。

このことばに、**「旦那さんと知り合うて五年、今日までまるで身内のように大事にして頂いて」**と返すお芳さん。

そして**「つる屋の旦那さん、私からもお礼を申します。江戸に寄る辺のない母と澪とを今日まで守り、支えてくれはった。本来なら私がせなならんことを代わりにしてくれはった。どないにお礼を申し上げても足らしまへん」** これはお芳さんの息子佐兵衛のことば。

お芳さんが老舗料理屋一柳の店主の後添いになることが決まり、居所の分かった息子も祝いの席に参列することになったのだった。

そして、澪もつる屋を出ることになる。一柳の店主は後継候補として、澪と佐兵衛を挙げていることを明らかにする。

それから、もうひとつ。

**「(前略)『食は、人の天なり』という言葉を体現できる稀有の料理人なのです。私からすれば、あなたほど、揺るがずに、ただひとつの道を歩き続けるひとは居ない」**(305、6頁)澪の迷う心を解きほぐす源斎のこのことばに対し、**叶うことなら、この手で食べるひとの心も身体も健やかにする料理をこそ、作り続けていきたい。この命ある限り。そう、道はひとつきりだ。「食は、人の天なり・・・・・・」**(306頁) 澪が源斎に向かって「食は、人の天なり」と繰り返すこの場面。

澪が迎えた大きな転機。澪は源斎と結ばれるかもしれない。澪はあさひ太夫を野江に戻すことができるだろうか、それはどうようにして・・・。

次の『天の梯』で物語は大団円を迎える。


 


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