透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2023.10

2023-11-02 | A ブックレビュー


 11月になった。今年も残すところ後2か月。時の経つのは早い。一寸の光陰軽んずべからず、本当にそう思う。10月はスケッチ展開催であっという間に過ぎ去った、という印象。

ブックレビューは今回が219回目。毎回5冊とすると、1,000冊を超えている。私にとって読書は食事と同じ生活の一部、一日として欠かせない。

ブックレビュー、10月に読んだ6冊の本たち。

『思い出せない脳』澤田 誠(講談社現代新書2023年)
脳に関する本を初めて読んだのは高校3年の時、『脳の話』時実利彦(岩波新書)だった。以来、脳について書かれた本は時々読んできた。『思い出せない脳』もその1冊。私の脳も必要なことがなかなか思い出せなくなっている。スケッチ展でも3年ぶりに会ったKMさんの名前が思い出せなかった。で、まず芳名帳に名前を書いてもらい、事なきを得た。 

帯に**最新脳科学が明かす記憶のミステリー**とあるように、この本で、著者は記憶のメカニズムについてあれこれ分かりやすく解説している。脳は実によくできたシステム、脳に関する本を読むといつもそう思う。

『美術の愉しみ方』山梨俊夫(中公新書2023年)
美術作品の愉しみ方は人それぞれ。でも基礎的な知識があるともっと深く愉しむことができる。ラグビーもルールを知るとより深く楽しむことができるように。スケッチ展開催を機に美術に関する本を読もうと思って買い求めた本。何か所か付箋を貼った。**劉生と同世代のもうひとりの重要な画家 萬鉄五郎は、劉生と同じように、自然を描くことは自分を描くことであると考える。**(67頁)自然を描くことは自分を描くこと、そう、火の見櫓のある風景スケッチには私が表現されている。

『異邦人(いりびと)』原田マハ(PHP文芸文庫2023年9刷)
原田マハには美術を題材にした小説が何作かあるが、「異邦人」もその内の1作。川端康成の『古都』を意識して書かれたとのこと、物語の最後に明かされる驚きの事実は、確かに『古都』。

『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮文庫2022年24刷)
原田マハの虚実織り交ぜたストーリー構成の巧さに感動、涙が出た。今年のベスト3に入る作品になるだろう。私にこの作家の美術を題材にした小説は全て読もうと思わせた作品。

『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ(文春文庫2022年)
『楽園のカンヴァス』に比べると地味と言うか、渋いと言うか、そんな印象。「松方コレクション」物語。上野の国立西洋美術館に行きたくなった。来年の春にでも行こう。

『旅をする木』星野道夫(文春文庫2022年53刷)
**カムチャツカ半島での取材中、ヒグマの事故により急逝。**(カバー折り返しの文章からの引用)
朝カフェのHさんが一番好き、という本。アラスカでの暮らしを通じて感じたこと、考えたことが平易で味わい深いことばで綴られている。既に53刷、これは名著。


松本清張の長編小説『火の路』(文春文庫)を再読し始めた(過去ログ)。

注:鍋冠山が出てくる箇所、過去ログでは上巻384頁となっているが、新装版では上巻449頁。尚、同453頁にも出てくる。**正面に鍋冠山がある。常念岳はそれに妨げられて見えない。** 






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