透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「定年入門」

2021-12-07 | A 読書日記

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 『定年入門』髙橋秀実(ポプラ新書2021年)、こんな本を読むような歳になった。「イキイキしなくちゃダメですか」という副題に、イキイキしなくたって良いという答えを期待して読んでみたが、著者の取材を受けた人たち(30人くらいか)は皆、実にイキイキと充実した日々を過ごしている。

心理学者でベストセラー「頭の体操」を著した多湖 輝氏は、退職してから大切なことは「きょうよう」と「きょういく」だと説いておられた。今から10年ほど前にラジオ深夜便で聞いた(過去ログ)。きょうようは教養ではなく、今日用、つまり今日、用事があるということで、きょういくは教育ではなく、今日行く、今日行くところがあるということ。このふたつがないと退職後の人生がつまらないということだった。『定年入門』にも「きょういく」と「きょうよう」という小見出しでこのことが書かれている(51頁)。ただし誰のことばか、記されてはいない。

退職後、第二の人生を実に有意義に生きた人として、まず浮かぶのは伊能忠敬だ。忠敬は50歳で家督を息子に譲り引退。それから江戸に移住して江戸幕府の役人でもあった高橋至時(よしとき)に弟子入りし、当時最先端の天文学を学んだ。55歳から71歳までの足掛け17年間で全国を測量、その成果は「大日本沿海興地全図」などの伊能図となった。

実にすばらしい人生を送った忠敬の墓前で手を合わせたくなり、20019年9月に墓のある上野の源空寺まで出かけた(過去ログ)。

今は仕事が自分を律している。朝、もっと寝ていたいと思っても仕事があるから起きる。退職してサンデー毎日な日々になった時、何によって自分を律するか。模糊としてはいるが数年間でやりたいこともある。だが、決して無理せず自然体で過ごそうと思うが、どうなることやら・・・。