みをつくし料理帖シリーズ全10巻 高田 郁/ハルキ文庫
「八朔の雪」
「花散らしの雨」
「想い雲」
「今朝の春」
「小夜しぐれ」
「心星ひとつ」
「夏天の虹」
「残月」
「美雪晴れ」
「天の梯」
■ 第7巻を読み終えた。ハイペースに自分でもびっくり。
想いびとと添う幸せ、料理人として生きる幸せ。澪は悩み苦しんだ末に後者を選ぶ。
**「魚の焦げる臭いも味も、わからんようになってしもたんです。風邪でこないなこと・・・」**(165頁)料理人として生きることを選んだ澪が匂いも味も分からなくなってしまう。ああ、なんということだ。
**かんかんかんかんかん、と甲高い鐘の音がはっきりと耳に届いた。長閑やかな刻を打ち壊す、容赦のない連打だ。**(286頁)
10巻もあればどこかで火の見櫓が出てくるかもしれないと思っていたが、擦り半か。この巻の終盤になって、吉原が火事になり(文化13年の吉原の大火という史実に基づいている)、野江(あさひ太夫)を助けた又次が命を落とす。**「頼む、太夫を、あんたの・・・・・・、あんたの手で・・・・・・」**(293頁)という最期のことばを澪に残して。この展開にはびっくりした。
遺骨替わりの灰を納めた壺に向かって種市は**「明日からまた、つる屋を開けるぜ。もう何処にもいかねぇで、俺たちとここで一緒に居てくんなよ」と話しかける。この場面に涙。
泣かせてくれるなぁ、この小説は・・・。