透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

御柱

2016-01-10 | A あれこれ

 松本市は波田上波田地区の御柱を紹介します。

長野県外の、いや県内でも大半の方は御柱といえば全国的に知られた「諏訪の御柱」を思い浮かべるでしょうね(過去ログ:2010年の御柱)。諏訪の御柱は申と寅の年の春に行われますが、今年は申年で御柱の年ですし。

『神と自然の景観論』 野本寛一/講談社学術文庫の第六章「道祖神祭りの風景―甲斐の太陽」に山梨県内の道祖神祭りが取り上げられていました。

同書には**道祖神祭りの飾り竿の先端には笹やシデがつけられており、これが神の依り代であることはいうまでもない。**(258頁)と書かれています。掲載されている写真を見ると、松本地方の御柱とはかなり様子が違いますが、その意味は同じなのでしょう。

**山梨県の道祖神祭りの飾り竿、すなわち、お山、ヤナギには、太陽を形象化した日の依り代を作り、年頭に際して新たなる太陽を迎え、一年間の太陽の恵みを予祝的に祈るという古層の太陽祭祀の形態が込められていたのであった。**(259頁)とも書かれていますが、先日取り上げた三郷北小倉の御柱はこの説明通りの解釈ができるのでしょう。

*****

上波田の二箇所の御柱を昨日(9日)見てきました。


中町の御柱





高さが10メートルを優に超える柱に横向きに付けた割竹の先端の御幣(幣束)や短冊に切り込みをいれた色紙でつくったヤナギ(柳)、巾着を飾ってあります。

遠くからも良く見える御柱は正月限定のランドマークです。

ところで、神様は時間や空間の変わるところ、隙間から入りこんでくるようです。節分の豆まきは季節の変わり目に厄神(鬼に具象化していますが)が入り込まないようにする行事です。

歳神様は年が変わる時に、この御柱を依り代に降りてくるのですが、このことは良い神様だけでなく、厄病神や貧乏神などの厄神、悪い神様も同じだといいます。それで良い神様だけが降りてくるように、このような綺麗な飾りの御柱を建てるのだという説明を友人が書いた論考で読みました。厄神はこのような綺麗なものを好まないそうで。

また、道祖神は空間の変わるところ、例えば集落の入り口に祀ってあります。道祖神が双体で仲の良い男神と女神なのは、やはり厄神除けだと聞きます。


下町の御柱



このような伝統行事は準備がとても大変でしょうね。でもずっと続けて欲しいものです。

過去ログ:松本地方の御柱