前にも書いたが、中学生のとき、奇妙な動物に出会った。北海道・帯広市の、帯広川の堤防を、ビロードのような光沢の毛並みの、小型の犬くらいの動物が歩いていた。なんだ、なんだ、と思って追いかけると、土手の柳の藪に逃げこんで消えた。太い長い尻尾の動物だった。
その日、電気屋の祖父にその奇妙な動物のはなしをした。電気屋のじいちゃんは、しばらく黙っていて、「やっぱり、いたか」といった。「カワウソだよ、それは」、祖父が子供のころ、十勝川にはたくさんのカワウソがいた、という。毛皮が高く売れたので乱獲され、北海道のカワウソは、絶滅した。
ずっと前に絶滅したといわれるカワウソをわたしは見たのだ。昭和38年ころのことだった。しかし、この話には、つづきがある。
小学生の娘が、帯広川で泳いでるヘンな動物を見た、といったのだ。娘は、帯広の西9条の橋の上から見たのだ。昭和58年ころのことだ。
その動物は、川のなかでしばらくこっちを見て、橋の下の流木のなかに潜っていった、という。顔は、犬や猫とぜんぜ違う、という。
その話を、小学生の娘から聞いたとき、『やっぱり、いたか……』と、わたしは思った。カワウソだ……。