散歩の途中で白い彼岸花をみつけた。
部屋のまえの植え込みには、今年も赤い彼岸花が咲いてる。わたしの故郷、北海道・十勝で一度もみたことがない花なので、最初に多摩川の堤防で、草の緑のなかに、この赤い花の群生をみたときは、新鮮な驚きがあった。『これはなんだ? この強烈な赤はなんだ!』と。
すぐに、あっ、これが彼岸花、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)か、と気づいた。彼岸花より曼珠沙華の語音のほうが、その鮮烈な姿にふさわしいな、とも思った。
わが帯広三条高校の同級生・橋本くんから、『切腹』のDVDを送っていただいた。工藤栄一監督の『大殺陣』(1964年 東映京都)をもってないだろうか、と尋ねると、すぐに『大殺陣』と『切腹』が届いた。
1日に封切りになる市川海老蔵主演の『一命』は、仲代達矢主演の『切腹』のリメイクだ。
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『切腹』は、小林正樹監督作品、1962年(昭和37年)の公開だ。1963年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞している。仲代達矢はもちろん、武満徹の音楽もじつにいい。
この映画『切腹』は、滝口康彦の『異聞浪人記』が原作だ。わたしは読んだことがなかったので、今夜、新潮文庫の縄田一男選のアンソロジー、人情時代小説傑作選『素浪人横丁』で読んだ。
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巷にそろそろ涼風が立ち初めて、残暑のきびしさもいつとはなく忘れられがちとなった、寛永年間のとある秋の昼さがりのことである。外桜田にある、井伊掃部頭直孝(いい かもんのかみ なおたか)の屋敷の玄関先に、ぬうっと突っ立って案内を乞う浪人ものがあった。
と、語りだされる『異聞浪人記』は、文庫本で38ページたらずの短編だ。内容は、重く、凄惨だ。現在公開中の映画だから、内容を書くのはよすが、二度も映画になったのは納得できる。たしかに傑作だ。悲しい傑作だ。『切腹』の橋本忍の脚本は、原作にほぼ忠実だ。
講談社文庫では映画の公開にあわせてか、『一命』のタイトルで、『異聞浪人記』をふくむ、滝口康彦の短篇集を発売している。これは近所の書店では品切りのようで店頭でみつけられない。(いまはアマゾンでも在庫切れになっている。)
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図書館で『異聞浪人記』を読むなら、滝口康彦作品集などがある。
滝口康彦(1924~2004)は、生涯、佐賀県多久市住んで、時代小説を書いた作家だ。
佐賀県立図書館 http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1018/ik-tosyokan/_56942.html