雪が解けたばかりの庭で、枯草のなかに、てんとう虫をみつけた。
どうやって、あの厚い、重い雪の下で越冬したのだろう? 成虫の姿で冬をのりきったのか? あるいは、サナギで越冬して、羽化したばかりなのだろうか?
枯草の単色のなかで、この赤い体色と黒い点は、鮮烈だ。ほんの小さいものだが、野原の風景のなか、白色以外のすべての色彩が消えて、5ヶ月。長い冬の後みる、この虫の赤は、心を明るくさせる。(てんとう虫は、天道虫と書く)。
てんとう虫を、しばらく眺めながら、もし、こいつが、この成虫の姿で、あの長い冬を、枯れ枝の下で、ジーッと耐えていたのなら、たいしたやつだな、と思った。
このナナホシテントウの成虫は、肉食で、アブラムシを好んで捕食する。だがしかし、越冬しているときは、何も食べず、絶食してすごせるのだろうか? あるいは、雪の下の枯れたり腐った植物を食べて耐えるのだろうか? (かれら、幼虫のときは菜食主義者なのだ)
それにしても、昆虫というのは、多様でタフで、複雑で、微細で精密で、じつに興味深い生き物だ。生態だけじゃなく、形も、色彩も、機能美をはるかに超越した驚異の美しさがある、やつもいるが、いっぽう、また、人間の美意識の、その感性の許容をこえた、見るに耐えらない、強烈に醜悪なやつもいる。
(ほとんどすべての昆虫は、人類と友好関係にない。搾取するか搾取されるか、収奪するか収奪されるか、殺すか殺されるか、の関係なので、人間の美意識を評価していないのだろうな、昆虫は‥‥‥‥。きっと、昆虫からすると、人類、哺乳類など敵にもならないだろうな。)
と、いうことを、部屋に入ってきた小さいハエを目で追いながらいつも思う。くやしいが感動するのは、その、昆虫の飛翔力の見事さだ。どんなスーパーコンピューターが、あの小さい小さい脳に組みこまれているのだろ?
昆虫は、人類、永遠の敵だが、興味つきない生き物だ。
てんとう虫は、英語では、ladybird という、らしい。わたしの、キャノンの電子辞書にある。米語では、ladybug とあるから、わたしは、オリジナルのイングリッシュマンのセンスのほうが、断然好きだな、ladybird 。
雪の下で、長い冬をたえた、ナナホシテントウ(七星天道)は、英国では、seven-spot ladybird 。