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明日なき暴走 |
女子の優勝は、佐伯由香里(さはくゆかり)、身長143㎝と小柄だが、折り返し手前から独走になった。みごとな走りだった。19才、初マラソンで優勝だ。優勝の佐伯由香里と2位の新谷仁美(しんやひとみ)は、ふたりとも小出義雄監督の門下生だ。
女子マラソンは、世代交代のときだが、やはりリードするのは、小出義男監督だった。
『十勝の木のうつわ』の佐々木要くんのブログで、昔、国鉄・士幌線の、停車駅でないところで、列車に止まってもらったと書いてる。そのとき、わたしも同行していた。それは、ニペソツを登った帰りだった。ニペソツ山は、北海道の中央部、大雪山系の南側にある2012mの、鋭利な山頂が美しい山だ。
山頂からの帰り、十勝三ツ股駅へもどらず、前天から、糠平湖に近い三の沢をおりて、林道を国鉄・士幌線の釣り場駅に向かった。十勝三ツ股発、帯広行きの最終列車が、釣り場駅に到着する時間はわかっていた。思ったより時間がかかっていたので、急いで沢をくだり、山道を走った。
板張りの短いホームにたどり着くと、そこは、釣りのシーズンだけ停車する臨時駅だった。今はシーズンオフで、この駅で列車は止まらない。もちろん駅舎もない。周辺に人家もない。原生林の谷間の真ん中だ。
もう秋の日が落ちかかっていた。そこらでテントを張って、もう一泊してもいい。でも、その前に、幌加駅か、糠平駅まで歩いて、電話をみつけなくちゃ、親が心配する。遭難騒ぎにもなりかねない。翌日の月曜日は、学校を休むことになる。わたしたちは、まだ高校2年生だった。山岳部の顧問教師にも言わず、生徒だけで週末一泊でやってきたのだ。
さて、どうしようか? 糠平駅まで歩こうか? 2時間か、3時間かな。わたしたちは、板張りのホームに座りこんでいた。レンガ色の一両だけのディーゼルカーが近づいてきた。誰かがひとり立ち上がって手をあげた。すると、列車がスピードを落としたのだ。わたしたちは、驚いてみんな立ちあがった。列車は止まり、「早く、乗れ」、窓から顔をだした運転手が言った。北海道の、燃える秋のことだ。
1975年のことだろうか、ペニーレーンのリード・ギターは、藤野敦志くんに替わった。その夏、十勝管内13カ所のライブを組んだ。ホール、公民館を貸してくれる町と村はすべて回ろう、という計画だった。ロックバンドには貸せない、町外の人間には使わせない、というところもあった。
こうして、「いまなりあきよし&ペニーレーン・十勝平野すみずみコンサート」がスタートした。いまなりあきよしは、ポリドール・レコードからシングル「九条物語」を発売してスマッシュ・ヒットしていた。アルバム「無風地帯」の発売キャンペーンに、十勝を選んだのだ。いまなりあきよしの経費は、プロダクションとレコード・メーカーが負担した。
ほとんど無名のフォーク・シンガーとアマチュア・ロックバンドのライブだ。チケット販売は、手売りだ。5枚売ってくれる高校生を10人みつけると、50枚が売れる。という地味な作業を、大江くんが引きうけてくれた。大江くんも高校生のときから、サウンドコーナーに通ってきたロック好きのお客さんだった。
大江くんは、わたしが手に入れた中古の黄色い、いすゞ・ユニキャブに乗って、広い十勝平野を走りまわってくれた。ユニキャブは、ジープ風スタイルの車だが、4WDではなかった。
1975年は、ブルース・スプリングスティーンのアルバム「明日なき暴走 BORN TO RUN」が発売になってバカ売れした。
Bruce Springsteen - Born to Run (Live and acoustic) http://jp.youtube.com/watch?v=ccKzusBCZKc&feature=related
Springsteen - Born to Run http://jp.youtube.com/watch?v=aQewwkbrp8o&feature=related
ブルーススプリングスティーン・ネット http://www.brucespringsteen.net/news/index.html