とだ九条の会blog

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「田母神問題」への歴史家有志の見解に見る(2)

2009年02月22日 | 国際・政治

昨日に引き続き、2008年12月19日に歴史教育者協議会から発表された「歴史家有志の見解」について、その原文の後半を転載させていただきます。(サイト管理者)

 コミンテルン陰謀説は冷戦時代のアメリカでつくられたものだが、何の根拠もない。ハル・ノートが日本を戦争に引きずり込むための仕掛けであったのではなく、日本の中国侵略に対する国際的非難に対抗し、中国での権益に固執した日本自身が、ドイツ、イタリアと三国同盟を結んで大戦突入の道を選んだのである。

 この戦争がアジア諸国の解放につながったというのは、よく持ち出される主張であるが、アフリカの解放にまでつながったと言ったのは、田母神氏がはじめてであろう。第2次世界大戦が結果として戦後のアジア諸民族の独立を生み出したのは事実であるが、それは日本の功績ではなく、諸民族の独立の闘いの結果である。日本が意図していたのは諸民族の独立ではなく、欧米諸国に代わってアジアの支配者となることであった。

 田母神氏は「我が国の歴史について誇りを持たなければならない」と言う。しかし、日本はあの戦争に敗北し、「再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」(日本国憲法前文) 新しい平和国家としての道を歩みはじめたのである。このことにこそ我々は誇りを持たなければならないのであって、戦前の歴史に誇りを持つことは「再び戦争の惨禍が起こること」に通ずる危険がある。そればかりでなく、このような見解を持つ人物が自衛隊のトップにいたことが世界に知られるならば、日本の国際的信用を失墜させ、日本への警戒心を高めるだけであって、日本にとって何のプラスをももたらさないであろう。

 11月13日付『朝日新聞』の「私の視点」欄で、志方俊之帝京大学教授(元陸将)は、この「論文」が自衛隊内の「長年の鬱屈」を示したと言い、これを解決するためには憲法を改正して自衛隊の存在を明記する以外にないと主張している。これは田母神「論文」の狙いが改憲キャンペーンの一環であることをあらわしているといってよい。自衛隊のなかにあるという「長年の鬱屈」を解決する方向がこのような形で示されたのは、イラク戦争を契機として自衛隊がいっそう肥大化し、防衛庁が防衛省に昇格し文民統制も弱まるとともに、海外派兵を恒久化して集団的自衛権を行使したい、そのために憲法を変えたいという要求が政界でも強まってきたためである。しかも、国民のなかにも格差の拡大や政治の混迷などによってやり場のない不満が高まっている。このような時期に過去の侵略を美化する言説が、こともあろうに自衛隊の最高幹部によって主張されたことには、日本の将来を誤らせるものとの強い危惧の念を抱かざるを得ない。私たちは、すべての国民の皆さんに対し、歴史の事実を学ぶことを通して、このような動きに対する厳しい監視の目を注がれるよう訴える。

2008年12月19日

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【出典】歴史教育者協議会ホームページ=http://www.jca.apc.org/rekkyo/index.html
(歴史教育者協議会:東京都豊島区南大塚2-13-8千成ビル)より

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