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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

簡易合併の可否(異聞)

2023-11-10 04:37:00 | 会社法(改正商法等)
子会社の吸収合併に伴う特別損失(抱合せ株式消滅差損)の計上に関するお知らせ
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230712520889/

「なお、本吸収合併により当社の個別財務諸表において特別損失を計上することとなりましたこと、及び本吸収合併を簡易合併で行ったことをお詫び申し上げます。」(上掲お知らせ)

 いやいや,差損を生ずる吸収合併では,株主総会の承認が必要で,簡易合併は不可(会社法第796条第2項柱書ただし書,第795条第2項第1号)なのであるから,「お詫び」で済む問題ではなく,「合併無効」であるはずだが。

cf. 平成23年4月15日付け「簡易合併の可否」

 この種の例は,決して稀ではない。知ってか知らずか,簡易合併後に,「抱合せ株式消滅差損の計上に関するお知らせ」を流して何食わぬ顔の上場企業もあるので,「お詫び」するだけマシともいえる?

 本来は,

「本合併に伴い、特別損失(抱合せ株式消滅差損)の発生が見込まれるため、会社法第796条第3項および第795条第2項第1号の規定により2023年12月に開催予定の定時株主総会の承認が得られることを条件としております。」(後掲お知らせ)
※ 会社法第796条第3項??

が正しいやり方である。

cf. 完全子会社の吸収合併および特別損失(抱合せ株式消滅差損)の計上に関するお知らせhttps://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20231109583846/

(以下再掲)
 ところで,法務局HPの「商業・法人登記申請」に掲げられている登記申請書記載例(1-22)の「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」は,従来から「差損」を顧慮しない内容である。親子会社の吸収合併であれば,無対価であることから,この証明書を不要という取扱いを採っている商業登記所も少なくないようである。

cf. 1-22
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#1-22

 商業登記所の審査で,「差損」の有無について,なぜノーチェックを貫いているのかが不可解である。

 「差損」の有無は,株主総会の開催の要否に関わり,「差損」が生ずる場合に,株主総会の決議がなければ,合併無効という重大な結果を招く事項であるのだから,「差損が生じないこと」を「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」の記載事項とすべきであろう。
(再掲おわり)

cf. 令和2年12月26日付け「債務超過子会社との合併,貸倒引当金を計上していれば合併差損は発生しない?」

 私は,簡易合併に関与する際には,「差損」の有無について会社担当者に対して必ず注意喚起をするし,「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」には,「差損を生じない」旨を記載するようにしている。
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